2023年11月1日

「9th International Tribology Conference, Fukuoka 2023(ITC Fukuoka 2023)」開催される

アーステック

日本トライボロジー学会(JAST)は,2023年9月25日(月)~30日(土)の6日間,福岡国際会議場(福岡市博多区)(写真1)で「9th International Tribology Conference, Fukuoka 2023(ITC Fukuoka 2023)」を開催した。

福岡国際会議場-ITC Fukuoka 2023
写真1 福岡国際会議場
ITCは1985年に東京で開催以来,1990年に名古屋,1995年に横浜,2000年に長崎,2005年に神戸,2011年に広島,2015年に東京,そして前回2019年に仙台と継続的に開催されており国際的にも広く認知されている。

9回目の開催となる今回は,国内外から975名(30ヵ国・地域)が参加し,発表登録件数は前回仙台大会を上回り,67件の講演が行われ,各国における最新のトライボロジー関連研究の成果を発表した。

開会の挨拶で,杉村 丈一 実行委員長(九州大学)は,「私たちは2020年初頭から様々な面で苦労し,2022年からは国際政治において予測不可能な時代に突入しました。また良くも悪くも多くをインターネットを通じて人々とコミュニケーションをとることを学びました。しかし科学技術の発展のためには,国際協力の維持が不可欠であり,直接会って話をして顔の見える関係を培う必要があります。『“Reunite, Invigorate and Create anInspiring Future” 再会,活性化,感動的な未来の創造』というスローガンは,トライボロジーの仲間たちが出会い,新しいアイデアや開発を交換し,トライボロジーを活性化させ,トライボロジーの今後の世界的な方向性を議論する刺激的な機会を提供したいという私たちの強い思いを表しています。日本トライボロジー学会主催のITCは今回で9回目となります。ITC Sendai 2019から4年,再びこのような貢献の機会をいただけたことに計り知れない感謝の気持ちでいっぱいです。福岡国際会議場は,3世紀から国際的な玄関口として栄えてきた美しい博多湾に面しています。アクセスしやすい福岡の都心で,活気と交流のある都市を育む文化,歴史,地理的優位性をお楽しみいただけます。人との出会いやセッション,そして刺激的な福岡の魅力を存分にお楽しみください」と挨拶した。

また,梅原 徳次 会長(名古屋大学)は,「日本トライボロジー学会(JAST)を代表して,世界中から国際トライボロジー会議(ITC)福岡2023に参加していただけることを嬉しく思います。ITCはJASTが主催する最も重要なイベントの一つであり,福岡でのこのカンファレンスは,JASTがこれまでに開催したITCの中で間違いなく最大規模になると期待しています。皆様がITCイベントを楽しみ,カンファレンスを通じて有意義な成果を得られることを願っています。また,ITC Fukuoka 2023組織委員会の準備と実行にご尽力いただきましたことに感謝いたします」と挨拶した(写真2)。

開会の挨拶をする杉村実行委員長(左)と梅原会長(右)-ITC Fukuoka 2023
写真2 開会の挨拶をする杉村実行委員長(左)と梅原会長(右)

Plenary Talkとシンポジウム

今回目玉の一つとなる,Satoshi Ide教授(The University of Tokyo)によるPlenary Lecture「Physics of fast and slow earthquakes」が28日に開催された。地震大国日本を象徴するテーマとして,地震の発生メカニズムにトライボロジーの側面からアプローチした研究について講演した。

また“Reunite, Invigorate and Create an Inspiring Future”のスローガンをタイトルとしたPrinciples of Tribology, Engineering Tribology, Tribology Simulation, Advanced Tribology Material, Bio-Inspired Tribology, Tribology for a Sustainable Societyの六つの講演でのPlenary Talkを開催した(表1・写真3)。

Plenary Talks-ITC Fukuoka 2023
Plenary Talkの風景-ITC Fukuoka 2023
写真3 Plenary Talkの風景

さらに三つの国際交流企画を含む八つのシンポジウムが開催された(写真4)。

  • Instabilities in Tribology: Phenomena, Analyses, and Countermeasures
     トライボダイナミクス(トライボロジーにおける動力学現象)をキーワードとする講演が行われた。
  • Mesoscopic Tribology Bridging the Gap between Nano-and Macro-scale
     「ナノとマクロをつなぐメゾスコピックな領域で何が起きているのか」,「ナノとマクロをどのようにつなぐべきか」について議論された。
  • Lubricants for Contributing to Carbon Neutrality and Sustainable Development Goals
     産業界における最大の関心事であるカーボンニュートラルとSDGsに関する潤滑油添加剤,基油の貢献例が報告された。
  • Latest Technology Trends for Lubricating Greases
     地球環境保全や電動化への対応など要求性能が多岐に渡り,年々高度な技術が求められるグリースの最先端の研究成果が紹介された。
  • Advancesin Sealing Technology Contributing to Environment
     環境問題に対するシール技術の動向ならびに,最新の基礎研究から応用研究まで幅広いシールに関わるトライボロジー技術が講演された。
  • The 4th Czech-Japan Tribology Workshop
     日本トライボロジー学会の国際連携推進の一環として,チェコ共和国およびV4国(スロバキア共和国,ポーランド共和国,ハンガリーとともに地域協力機構,(ヴィシェグラードグループ))と日本の間にトライボロジー分野における情報交換と交流の場を形成し,将来に渡る継続的な共同研究や技術交流の基礎を築くことを目的として開催された。
  • Early Career Tribologists Symposium(JAST – STLE Joint Session)
     日本トライボロジー学会(JAST)と米トライボロジー学会(STLE)に所属する若手トライボロジストたちが国際的な協力と将来の科学技術協力の基盤構築のために最新研究成果の発表と議論が行われた。
  • JAST – GfT Joint Symposium
     日本トライボロジー学会(JAST)とGesellschaftfür Tribologie e.V.(Gft)(German Society for Tribology)が2019年にMoUを取り交わし学会間の交流を深める中,64th German Tribology Conferenceの会場とITCの会場をオンライン接続してハイブリッド形式で講演や討論が行われた
シンポジウムの風景-ITC Fukuoka 2023
写真4 シンポジウムの風景

伝統文化を伝えるCulture program

海外からの参加者に日本の文化に触れていただくCulture program(写真5~7)として,26日には日本茶(抹茶)の提供,27日のイブニングフォーラムでは佐賀大学のオリジナル清酒「悠々知酔」の試飲会や沖ノ島の紹介,28日には博多人形の絵付け体験が行われた。

ロビーで抹茶の提供-ITC Fukuoka 2023
写真5 ロビーで抹茶の提供
日本酒試飲会-ITC Fukuoka 2023
写真6 日本酒試飲会
博多人形の絵付け体験-ITC Fukuoka 2023
写真7 博多人形の絵付け体験

テクニカルセッションやポスターセッション

各カテゴリーで分類され,口頭発表とともに,ポスター発表が行われた(写真8)。また日本トライボロジー学会の論文賞「TribologyOnline」の論文賞「ITC Fukuoka 2023 Excellent Paper Award」や若手研究者向けの「ITC Fukuoka 2023 Best Poster Award」の優秀発表者をバンケットにて発表,表彰式が行われた(写真9)。

ポスターセッションの風景-ITC Fukuoka 2023
写真8 ポスターセッションの風景
優秀論文賞の表彰-ITC Fukuoka 2023
写真9 優秀論文賞の表彰

展示会やバンケット

展示会場では国内外企業展示34社,書籍展示4社がトライボロジー関連の製品やカタログ展示を行った(写真10)。またランチョンセミナーでは,Rtec-Instruments,島貿易,日本サーマル・コンサルティング,パーカー熱処理工業,Falex Corporation,ブルカージャパンの6社が自社技術やサービスの紹介を行った。

企業展示の風景-ITC Fukuoka 2023
写真10 企業展示の風景

28日の夕方にはバンケットが行われ,杉村 実行委員長の挨拶,牧野 武朗 副実行委員長の乾杯の発声で,終始なごやかな雰囲気での宴が行われた。参加者は,日本舞踊の余興など日本の伝統文化を堪能しながら情報交換など参加者同士の交流が行われた(写真11~13)。

なお,次回(第10回)ITCは2027年秋に姫路での開催を予定している。(’23 11/1)

牧野副実行委員長による乾杯-ITC Fukuoka 2023
写真11 牧野副実行委員長による乾杯
バンケットの風景-ITC Fukuoka 2023
写真12 バンケットの風景
余興の風景-ITC Fukuoka 2023
写真13 余興の風景

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