NTNは,複数のAI手法を組み合わせ,軸受の余寿命を高精度に予測する技術を開発した。軸受の故障の原因となるはく離が発生してから使用限界までの余寿命を高精度に予測することで,機械設備の効率的なメンテナンス計画の立案を可能とし,生産性の向上やコストの削減に貢献する。
同技術は,ディープラーニング(深層学習)とベイズ学習を組み合わせることで,軸受のはく離が発生してから破損するまでの余寿命の推定精度を向上させたもの。複数のAI手法の中から,畳み込みニューラルネットワークと呼ばれる画像処理に特化したディープラーニングを選択し,軸受の振動データを画像データに変換して利用することで,軸受の損傷状態や余寿命の予測を可能にしている。さらに,軸受の損傷の進行度合いにおける個体差や測定データのばらつき(誤差)を考慮して予測値の信頼性を評価する階層ベイズ回帰を組み合わせることで,信頼性の高い予測モデルを確立した。損傷状態も考慮することで,従来の技術と比較して余寿命の予測精度を約30%向上させている。
同技術は,2017年に大阪大学大学院工学研究科に設立した「NTN次世代協働研究所」における共同研究によるもので,同社が100年以上にわたり培ってきた軸受に関する技術やノウハウと,同大学の福井 健一 准教授(産業科学研究所)をはじめとする最先端のAI研究に関する知見を融合することにより実現した。(’23 10/4)