ソフトバンク,三洋化成工業,ORLIB,日本ケミコン,および産業技術総合研究所(産総研)は,防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」に係る2022年度新規採択研究課題の公募で,ソフトバンクが研究代表機関となって提案した研究課題「有機正極二次電池の充放電機構の解明と高エネルギー密度化の研究」が採択されたことを発表した。同研究では,現行のリチウムイオン電池より大幅に軽量化が可能な有機正極二次電池に着目して,その充放電機構の解明や課題である高サイクル特性と高重量エネルギー密度(Wh/kg)の両立に取り組み,長時間の滞空が可能な無人航空機などへの活用を推進する。また,レアメタルを含まない炭素や水素,窒素などの元素で構成された有機正極二次電池の研究を加速することで,世界的に問題となっているレアメタルの資源不足や価格高騰の影響を受けにくい次世代電池の実現を目指す。
有機正極二次電池は,正極活物質に有機材料を用いることが大きな特徴。有機材料は骨格が軽元素で構成され,リチウムイオンの吸蔵能(重量当たりで含有できるリチウム量の多さ)に優れていることから,重量エネルギー密度の大幅な向上が期待されている。また,資源問題につながる恐れがあるレアメタルを含まない有機正極の使用により,コスト低減や自国資源でのサプライチェーン安定化などの利点がある一方で,電極内の活物質割合やサイクル寿命などに課題もある。同研究の遂行を通して充放電機構を解明し,重量エネルギー密度500Wh/kgを超える長寿命有機正極二次電池の開発および有機正極二次電池の早期実用化を目指す。(’23 4/5)