2025年6月11日

「トライボロジー会議2025 春 東京」開催される

アーステック
メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2025

日本トライボロジー学会は2025年5月26日(月)~28日(水)の3日間,国立オリンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷区)で「トライボロジー会議2025 春 東京」(実行委員長:尾形 秀樹 氏,IHI)を開催,3日間で約160件の各種トライボロジーに関する講演・発表が行われ,約900名が参加した。

一般講演,一般シンポジウム,特別フォーラム

一般講演は,「機械要素」「境界潤滑」「固体潤滑」「シミュレーション」「潤滑剤」「トライボケミストリー」「バイオトライボロジー」「表面・接触」「表面処理・コーティング」「疲労」「分析・評価・試験方法」「摩擦」「摩擦材料」「摩耗」「流体潤滑」の分類で学術研究や実用技術に関する各種講演が行われた。また,2024年度日本トライボロジー学会論文賞・技術賞受賞者による受賞講演も行われた。

シンポジウムセッションは,(1)トライボロジーのデータ計算科学,(2)次世代燃料を用いた内燃機関の研究開発とトライボロジー要素部品及び開発環境に関する課題(写真1),(3)環境中の摩耗粉の分析と評価,でそれぞれ開催。シンポジウム(2)では,三原 雄司 氏(東京都市大学),藤田 貴也 氏(日立Astemo),松本 謙司 氏(東京電機大学),及川 昌訓 氏(東京都市大学)のオーガナイザーのもと,下記6件の講演が行われた。

  • 【基調講演】長期間使用したボールベアリングの破損と水素の関与……松本 謙司 氏(東京電機大学)
  • 水素内燃機関のトライボロジーと信頼性に関する研究の取り組み……三原 雄司 氏(東京都市大学)
  • 耐焼付き性に及ぼす表面形状の影響……本田 知己 氏,小西 隆翔 氏,今 智彦 氏(福井大学)
  • 水素エンジン開発への取り組み……臼井 美幸樹 氏(リケンNPR)
  • カラーアナライザーを用いた核融合研究への応用事例―プラズマ対向壁に形成される堆積層分布同定―……本島 厳 氏(核融合科学研究所(NIFS))
  • 船舶用水素ディーゼル混焼エンジン取り組みについて……山口 聡 氏(ジャパンハイドロ)
シンポジウムセッション-トライボロジー会議2025 春 東京
写真1 シンポジウムセッション

27日(火)に開催された特別フォーラムでは,村田 潔 氏(明治大学)が「生成AIをめぐる倫理問題・社会問題」のテーマで講演。生成AIシステムの開発と利用に伴って発生すると考えられる倫理問題・社会問題の特質について考察し,「概念とコンテクストの混乱」,「偽真実の社会的構成とその増幅」,「責任」をキーワードとして,そうした問題にどのような主体が,いかに取り組むべきなのかについて解説した。

第69期定時社員総会・学会賞授賞式

27日(火)に開催された第69期定時社員総会では,2024年度(第69期)事業報告と会計報告,2025年度(第70期)事業計画について説明。その後,名誉会員として梅原 徳次 氏(名古屋大学)が推薦され,いずれも承認された。次期(第70期)役員選任では,佐々木 信也 氏(東京理科大学)が第70期会長に就任した。副会長は三宅 晃司 氏(産業技術総合研究所)が新たに就任,村上 元一 氏が再任,常務理事には田川 一生 氏(ENEOS)が新たに就任した。

佐々木 新会長(写真2)は就任の挨拶で,「69期に江上 会長のもと,学会のガバナンスを強化するということで,強力なリーダーシップにより様々な改革が行われました。財務環境についても色々と努力するということで,学会誌を電子化することによりかなり経費が削減できるといった方向性が見えました。70期ではこれらの施策を着実に実行に移していくことが重要だと思います。また,学会の命綱でもある論文誌『Tribology Online』のインパクトファクターがついたとはいえ,まだまだ十分ではなく,国際誌としての地位を確立するまでは皆様のご協力が必要です。70周年という節目を迎えて,今まで諸先輩方に築いていただいたこの学会をより良くするためには,良き伝統はそのまま伸ばしていき,改善すべきところは改善し,2050年のJASTが産業界,学術界から必要とされて輝く存在としてあるように,長期的な目線から学会の運営を見直していきます。皆様のご理解とご協力なくしては一歩たりとも前に進むことはできませんので,これまで以上のご支援を賜りますよう,どうぞよろしくお願いします」と述べた。

佐々木新会長就任の挨拶-トライボロジー会議2025 春 東京
写真2 佐々木新会長就任の挨拶

総会後,2024年度日本トライボロジー学会賞の表彰式が行われ,川久保 洋一 氏,鈴木 政治 氏,中島 晃 氏,新田 勇 氏の4名が受賞した功績賞および論文賞3件(8名),技術賞3件(14名),奨励賞4名,教育貢献賞1件の表彰と学生奨励賞10名の受賞者の報告が行われた(写真3)。

「潤滑油画像解析による劣化診断法の開発」で技術賞を受賞(受賞者:写真左から出光興産 小別所氏,中村氏,福井大学 本田氏,出光興産 関口氏)-トライボロジー会議2025 春 東京
写真3 「潤滑油画像解析による劣化診断法の開発」で技術賞を受賞(受賞者:写真左から出光興産 小別所氏,中村氏,福井大学 本田氏,出光興産 関口氏)

企業技術・製品展示会

会期中,展示会場では,企業技術・製品展示コーナー(写真4)が設けられ,50社が出展,パネルやカタログなどによる各種PRが行われたほか,展示会場内で企業プレゼンテーションが開催され,Rtec-Instruments,出光興産,英弘精機,三洋貿易,住友重機械工業,DIC,デュポンジャパン,東陽テクニカ,トリニティーラボ,ナノフィルムテクノロジーズジャパン,ニッペコ,日本サーマル・コンサルティング,パーカー熱処理工業,パーク・システムズ・ジャパン,BASFジャパン,bpジャパン,ブルカージャパン,三井化学,堀場製作所,山産,の計20社が,企業や製品についてプレゼンテーションを行った(写真5)。また,展示会場では,昨年好評を博したVR体験コーナー企画が催され,多くの参加者で盛況となった。(’25 6/11)

企業技術・製品展示コーナー-トライボロジー会議2025 春 東京
写真4 企業技術・製品展示コーナー
企業プレゼンテーション-トライボロジー会議2025 春 東京
写真5 企業プレゼンテーション

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