2025年9月22~26日の5日間,独・ハノーバーで「EMO Hannover 2025(エモ ハノーバー2025)」(主催:ドイツ工作機械工業会(VDW)/ドイツメッセ)が開催される。
同展は,工作機械の国際見本市で,工作機械,生産システム,アディティブ・プロセスから精密工具,オートメーション,測定技術,品質保証,ソフトウェア,アクセサリーまで金属加工のバリューチェーン全体を紹介する世界でも有数の生産技術の展示会。世界の機械,自動車・航空宇宙産業,金属加・加工産業,医療機器,エネルギーサプライヤー,エレクトロニクス産業などの先端技術を求める専門家に,関連する先端技術を展示,紹介する場となっている。
前回EMO2023では,45ヵ国から1,800以上の出展者が展示,約140ヵ国から約92,000人(うち,日本からは1,600人)の業界関係者が来場した。




EMO 2025の魅力とみどころ
EMO 2025では,「Innovate Manufacturing(イノベート・マニュファクチャリング)」をメインテーマに,最新の金属加工技術をあらゆる分野にわたり幅広く展示する。
MOの主催者であるVDWエグゼクティブ ディレクターのマルクス・ヘーリング 氏は,EMOについて「メーカーもユーザーも含め,国際的な業界関係者全員が対話できるプラットフォームとして,世界的にもユニークな存在です」と強調する。また,ヘーリング 氏はリアルな見本市に参加する価値として「現在の見本市の一番の価値はネットワーキングです。業界の人々に会う,そして自分の業界の将来がどうなるのかアイディアをもらうことです。EMOではセミナーはじめ色々な情報を得ることができます。コロナ禍で学んだことですが,見本市で,実際に対面でサプライヤーと会う必要があるということがわかったわけです」と語る。
日本から約50社が出展
EMOでは日本の存在感も際立つ。昨年の工作機械生産額は約87億米ドルで,日本は世界のトップメーカーの中で3位にランクされる。生産量の60%以上が輸出されており,日本メーカーにとっての主要顧客グループには,電気,機械,金属製造,加工が含まれる。機械と自動車産業は金属加工の主要な顧客であり,EMOの重要な来場者でもある。
EMO 2025では,日本からはDMG森精機,ヤマザキマザック,オークマなどの工作機械メーカーはじめ約50社が出展予定で,旋盤,マシニングセンター,切削工具,制御システム,ロボットなどの金属加工用の超近代的な製品群が展示される予定だ。
世界のメガトレンドに関するソリューションを展示
競争の激化,投資の鈍化,コスト高など,世界的に同じような課題が業界全体に見られる。持続可能な製品へのニーズが高まっているのと同時に,熟練労働者の不足は多くの場所で成長を妨げており,人工知能や積層造形などの新技術の活用には,継続的なさらなる教育や訓練を必要としている。EMO 2025では現在,35ヵ国から約1,300の出展者がこれらの課題に対するソリューションを提示し,各分野の専門家が自動化,AIを含むデジタル化,サステナビリティといったメガトレンドについて議論し,金属加工におけるさらなる発展を模索する。
金属加工の効率化のための自動化に関するソリューションが多数展示
高騰するコストと熟練労働者の不足が,日本の産業界における自動化の推進力となっている。自動化のソリューションは,生産工程の効率と品質を向上させている。これらは投資の主要な動機の一つであり,多くの出展者によって多種多様な形で紹介されている。パレットチェンジャーやハンドリングシステムのようなシンプルなソリューションから,ロボットや自走式システムの自律設備の使用まで,その範囲は多岐にわたる。
EMO 2025では,多くの出展者がこのような技術で機械をアップグレードした,幅広い自動化のソリューションを展示する。特にコボットの特別展示エリアは,多くの自動化ソリューションが集中的に展示される注目のエリアで,共同作業ロボットが展示され,その可能な用途と使用例などが実演される。
サステナビリティ特別展示エリア
日本は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目指している。そのため,他の多くの国々とともに,日本もより一層の気候保護対策と,自国産業のグリーン・トランスフォーメーション(GX)への投資に取り組んでいる。生産におけるポイントは,エネルギーと材料の消費を削減し,循環型経済,またはリサイクル経済を導入することである。例えば,省エネ性の高い新しい機械への投資は,エネルギーの節約につながり,ひいてはカーボンフットプリントの削減にもつながる。最新の電気モーターと革新的な駆動技術も,従来のものに比べて大幅な電力の節約となり,さらに,制御技術の向上,圧縮空気や油圧アプリケーションの最適化の構築,あるいは低摩擦のベアリングやガイド技術の使用でさらなる効果をもたらす。
EMO 2025のサステナビリティ特別展示エリアは,未来の持続可能な生産のための最先端のソリューションを体験でき,エネルギー効率,再生エネルギーの統合,循環型経済,ライフサイクルコストなどのトレンドについて,出展者と来場者が情報を共有することができる場となる。
AI+デジタライゼーション特別展示エリア
人工知能(AI)は現在,データ分析のスピードアップ,生産性の向上,新たなビジネスモデルの確立において重要な要素となっている。半導体産業は,デジタル技術の開発と利用において重要な役割を果たしているが,半導体はモノのインターネット(IoT)やAIなどの技術を活用することで,ユーザーが生産プロセスをよりインテリジェントに設計することを可能にしている。半導体は,生産プロセスの効率に関する透明性を提供するだけでなく,機械やプロセスのリアルタイム監視・制御,予知保全を容易にしている。
EMO 2025のAI+デジタライゼーション特別展示エリアでは,産業界の投資家や行政に対し,AIと結合したネットワーキングの最新の可能性を提示する。
アディティブ・マニュファクチャリングの特別展示ブース
上記の三つの分野(コボット,サステナビリティ,AI+デジタライゼーション)の進歩が投資を刺激し,生産技術に対する需要を押し上げると推測される。これに加えて,EMO 2025では金属加工に関するもう一つの重要なトピックである,アディティブ・マニュファクチャリングの特別展示ブースを設置し,アディティブ・マニュファクチャリング分野の最新アプリケーションにも焦点を当てる。
スペシャルユース特別展示,スタートアップ・エリア
将来と若い才能に目を向け,機械工学のトレーニングと開発財団(Nachwuchsstiftung Maschinenbau)は,将来の課題に直面する若く有望な専門家を支援している。適格な訓練や教育は,業界の成功の基盤となる。同団体は,その的確な活動により,この産業が革新的で競争力を維持できるよう尽力している。Special Youth(スペシャルユース)特別ブースでは,社内における技術の普及やデジタル化の要求に対して,どのようなトレーニングが最適であるかを示す。また,スタートアップ・エリアでは,革新的な若いスタートアップ企業が,斬新で先駆的なソリューションを紹介する。
金属加工における50年の革新
EMOは2025年に50周年を迎える。1975年に設立され,半世紀の間,業界の専門知識を結集し,金属加工の未来を形作る上で主導的な役割を果たしてきた。ヘーリング氏は「2025年,EMOは再び国際的な金属加工業界全体の祭典となるでしょう。EMOは,我々がすでにどれほどの進歩を遂げ,まだどれほどの可能性が残されているかを印象的に示している」と語る。
EMO 2025の魅力や期待についてパネルディスカッションを開催
EMO 2025の開催に先立ち,ドイツメッセ日本代表(代表:竹生 学史 氏)は2月19日(水),都内でプレスカンファレンスを開催し,マルクス・へーリング 氏(VDWエグゼクティブ ディレクター),ハートヴィヒ・フォン・ザース 氏(ドイツメッセ ヘッドオブニュービジネス)が同展の概要や魅力について説明。その後,モデレーターの清水 伸二 氏(日本工業大学 工業技術博物館 館長)の司会のもと,同展の出展者であるオークマの山本 武司 氏(取締役 常務執行役員)とヤマザキマザックの山崎 拓 氏(執行役員 欧州副総支配人)を交えてEMO 2025の魅力や期待についてパネルディスカッションを開催した。

―EMOの魅力について
清水:まず,出展者側から見たEMOの魅力についてお聞きしたいと思います。
山本:私どもオークマの欧州の展示会への出展は1970年のハノーバーショーが最初かと記録しています。EMOに関しては1975年の第1回パリ開催以降,毎回出展させていただいております。EMOに出展する理由は,何と言っても欧州は工作機械のメッカだと考えております。そのメッカでお客様との接点を築いていけるということで,弊社から見ても世界で最も重要な展示会の一つであると認識しています。EMOの魅力は,デジタルではなくリアルであるという点です。デジタルで得られる知識から活きた知恵に変えられる場所だと思っています。知恵に変わるのは,やはり人と人とのコミュニケーションがあるからではないかなと考えています。メーカーとしては,お客様の先のお客様のニーズを知ることによって私どものお客様が何をしなければいけないかを理解する,それに対して私どもはソリューションを提供する,その中の一つとして工作機械がある,そのような位置づけではないかと考えております。私どもメーカーにとりまして,お客様とコミュニケーションをはかりながらお客様の持ってらっしゃる知恵や悩み,チャレンジを共有化して具現化していく貴重な機会であると思います。もう一つは,弊社のブランド価値を高めることです。弊社がどんな個性をもった会社か,何を得意としている会社なのかを皆様にご紹介できる場ではないかと思います。最新の技術トレンド,マーケットトレンドを知ることができて会社としましても将来への投資に対する羅針盤のような役割を果たしているのではないかと考えております。
山崎:山本様がおっしゃったことは私もすべて同意しておりまして重複する内容は割愛しますが,2点付け加えさせていただきますと,まず1点目は,EMOという1週間のイベントで我々欧州中のスタッフが一堂に会して皆で結束して士気を高めることができる貴重なイベントであるということです。もう一つは,EMOのような国際展示会は世界中に数多く存在していますが,EMOほどフェアな競争ができている展示会はないのではないかと思います。例えば他国の展示会に行くと地元の企業に偏っていることがありますが,EMOは世界中のメーカーが一堂に分け隔てなく展示していますので,我々出展者にとっても,来場する皆様にとっても世の中のトレンドをはかり知ることができますので今後の戦略を立てていくうえでも大変重要な展示会であると感じています。
ザース:私たちも他の見本市も開催していますが,見本市はオリンピックと似たようなものだと思います。参加する人たち全員に対して公平な対応をしています。

―EMOが多角的な役割を果たしてきた背景
清水:EMOが多角的な役割を果たしてきている背景について教えてください。
へーリング:それはEMOの歴史にあると思います。我々50年の歴史があり色々な経験があります。EMOの前にも工作機械の見本市はありましたが,出展者側だけでなくビジター側両方の国際性というものが一つの魅力になっていると思います。単にお客様に対して何を提供できるかではなく,お客様から何が必要なのかニーズを聞くという,双方が学び合うというところがEMOの醍醐味かと思います。また,多くの展示会のフォーカスは,自国のマーケットに焦点を当てています。EMOの来場者は50%以上が海外からで,出展者も50%以上が海外からの出展者です。海外からのサプライヤーが色々な製品を見ています。お客様も国際性豊かです。
―EMOの将来展望について
清水:今,世界の技術動向やユーザーのニーズが急激に変化していますが,主催者側として,EMOをどのように進化させようとされているのか,EMOの将来展望について教えてください。
ヘーリング:そうですね。50年先を見ても恐らくEMOもトレードショーも変わっているでしょう。ネットワーキングがますます重要になってくると思います。EMOは学習する機会,何が将来のソリューションであるかを模索することができる機会の場として発展していくと思います。
ザース:EMOでの私の役割は,これから新たな見本市を開発していくことにあります。未来の見本市はプラットフォーム作りになってくると思います。出展者であろうと来場者であろうとコミュニケーションをすることができるプラットフォームです。その中でお互い商品を見せ,ライブイベントをはかりながらネットワークを作っていく,新たなアイディアをコミュニケーションをしながら作っていくというプラットフォームを作っていく必要があります。ですから,EMOのような見本市はよりエモーショナルに訴えていくものになると思いますし,参加する人たちにより豊かな体験をもたらすものになっていくと思います。
清水:出展者側からこんなEMOになってほしいという期待はありますでしょうか。
山本:一つの会社というよりも,工作機械業界全体の発展に寄与するような取組みをしていただきたいなと思います。工作機械は非常に魅力的でやりがいのある業界であるということを若い人たちに伝えられるような展示にしてほしいと思っております。
山崎:今後の時代を担っていくのはZ世代の方々で,コストパフォーマンスを非常に重視しますので,EMOは大変素晴らしいプラットフォームではあるのですが,展示者側も努力して見やすい展示を心がけておりますが,大きな会場で自分の目的のものを見つけやすくする工夫が展示者だけでなく運営者側にも必要ではないかと考えております。また,エンジニアを集めることも大変重要ですが,工作機械を世の中に広く知れ渡ってもらうために,ソーシャルメディアやユーチューバーなどのインフルエンサー,もしくはEMOの専用チャンネルを頻繁に更新するなどの取組みもそのような世代に響くのではないかと思います。

-
<EMO Hannover 2025(エモ ハノーバー2025)開催概要>
- 開催期間:2025年9月22日~26日 9:00~18:00
- 会場:ハノーバー国際見本市会場
- 主催:ドイツ工作機械工業会(VDW)/ドイツメッセ
- 公式ホームページ:https://emo-hannover.com/
- EMO Hannover 2023来場者分析 ※前回EMO Hannover 2023の実績より
【出展者数】
637社(ドイツ国内),1,202社(ドイツ国外・45ヵ国から),計:1,839社(229,135m²,17ホールを使用)
来場数:92,159名(136ヵ国から来場) ※48%がドイツから,52%がドイツ国外から来場
【国別来場TOP20(ドイツ除く)】
トルコ,中国,オランダ,イタリア,スウェーデン,ポーランド,インド,デンマーク,スイス,オーストリア,日本,チェコ,フランス,イスラエル,スペイン,韓国,台湾,ノルウェー,ベルギー,米国
【来場者が関心のある出展分野】
工作機械:72%,精密工具やクランプ工具:40%,オートメーション,ロボティックス:36%,計測技術と品質保証:26%,ソフトウェア,製造とプロセスオートメーション:24%,インダストリー4.0:23%
【来場者層】
<職位>企業のオーナーまたは共同オーナー:13%,役員クラス:13%,本部長クラス:13%,部長・課長級:18%,熟練社員:21%
<購入決定権について>購入決定権者:23%,購入決定に直接関与:26%,購入決定に一定の関与:23%
<EMO Hannover 2025に関する問合せ先>
EMO Hannover日本総代理店
ドイツメッセ日本代表
合同会社International Linkage
竹生 学史 氏
URL https://intl-linkage.co.jp/dm/emohannover/
E-mail:masahito.takeo@intl-linkage.co.jp (’25 3/12)