表面技術協会の高機能トライボ表面プロセス部会と近畿高エネルギー加工技術研究所(AMPI)のドライコーティング研究会は3回目となる共同研究会を2021年8月17日(火)にZoomを用いてオンラインで開催した。
高機能トライボ表面プロセス部会代表幹事の上坂 裕之 氏(岐阜大学)は冒頭の挨拶で,今回のテーマは「トライボロジー」がキーワード,ドライコーティング研究会からはトライボロジーの表面分析とその場分析を中心としたテーマを,高機能トライボ表面プロセス部会からはトライボロジー物性を出すための材料のプロセス技術を取り上げたとテーマを説明した。またドライコーティング研究会の植栗 成夫 氏は,同じような研究をする研究会との共催を進めており高機能トライボコーティング研究会とは今回3回目の共催となると話した。当日の講演内容は以下の通り。
1.「水素含有DLC膜の境界潤滑下におけるMo系粒子による摩耗促進と表面増強ラマン分光法による極表面分析」 野老山 貴行 氏(名古屋大学大学院)
炭素系硬質薄膜はMoDTCとの使用により異常摩耗することが報告されている。Mo系粒子を有する潤滑油中摩擦における,摩耗促進機構の解明を行い,膜内の水素脱離に及ぼす粒子の影響について明らかにした。
2.「高密度プラズマによる高性能・高生産性を両立したDLC成膜技術および装置の開発」 中田 博道 氏(トヨタ自動車)
高密度プラズマで形成されるDLC膜の成膜技術およびその量産装置を開発し,次世代自動車部品へのエントリ生産への適用について紹介した。
3.「中性子反射率法から見る添加剤吸着挙動と摩擦特性」 平山 朋子 氏(京都大学大学院)
添加剤として脂肪族カルボン酸を用い,その吸着挙動と摩擦特性について中性子反射率法から解析し,鎖長の影響について報告した。
4.「DLCコーティングの最新動向~ドロップレット制御による機能向上」 大城 竹彦 氏(日本アイ・ティ・エフ)
イオンプレーティング法によりDLC膜を形成する際に発生するドロップレットを制御することで,ta-C膜よりも優れた特性を有するDLC膜が作成できたことを紹介した。(’21 9/15)