三洋化成工業は,電気自動車(EV)の駆動ユニット「eAxle」向けに潤滑油添加剤「アクルーブNS-100」を開発したと発表した。EV特有の低粘度化による課題である油膜の薄膜化や摩耗・焼き付きリスクに対応し,航続距離の延伸と駆動部の耐久性向上に貢献する機能性ポリマー添加剤として注目される。
同社が長年展開してきた潤滑油向けポリマー「アクルーブ」シリーズの技術をベースに,焼き付き・摩耗防止機能を新たに付加したシリーズ初の製品で,すでに国内の大手潤滑油メーカーでの採用が決定しており今夏の市場投入を予定している。
今回開発したアクルーブNS-100は,eAxle内で使用される低粘度のEV用潤滑油に添加することで金属表面に選択的に吸着し,保護膜を形成する。油膜が極めて薄い条件下でも摩耗や焼き付きを防止する性能を発揮する。
この吸着性は,新たに導入した官能基を有するポリマー骨格により実現されており,従来のアクルーブ(粘度指数向上剤)にはなかった機能。吸着性を高めつつも,EV用途で求められる電気絶縁性や銅腐食性の低さ,酸化安定性など多面的な性能も兼ね備えており,「潤滑」「冷却」「絶縁」といったEV用潤滑油の複雑な要求特性に対応し,市販品への添加試験において,最大焼き付き荷重の指標で約25%の性能向上を示し高い評価を得ている。
またEV以外にも電気特性や境界潤滑が要求されるグリースや産業用の作動油への応用も視野に入れ今後さらなる展開を見込んでいる。 (’25 7/30)