出光興産は,2025年2月7日(金)にZoomによるオンライン方式で「2024年度切削・熱処理研究会」を開催,568名が参加した。
冒頭,同社潤滑油二部次長の加納 秀三 氏は,「本研究会は,1975年に開始された切削油研究会,1976年に開始された熱処理油研究会にルーツを持ち,長年にわたりお客様との最新技術情報の共有と意見交換の場として続けてまいりました。今年は,ポストコロナ時代における新しいセミナーの形を模索し,オンライン開催を決定いたしました。昨今の製造業を取り巻く環境は,SDGsの達成や脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速する一方で,EV化潮流の変動や国際的な政治情勢の影響など不確実性が高まっております。こうした状況下で,製造現場においては環境配慮と生産性向上の両立が重要な課題となっています。本研究会では,皆様の日頃の活動に役立つテーマを厳選し,これらの課題に対する解決策を提供できればと考えております。本日の講演内容が,皆様の生産性向上,環境配慮型のものづくりの実現,そして次世代技術開発のお役に立てることを心より祈念いたします。」と開催の挨拶を述べた。
講演は二部構成で切削パートでは,山根 八洲男 氏(広島大学 名誉教授)は「切削条件から見た切削油剤の効果」と題し,被削材や工具あるいは油剤の供給方法や工作機械などの「切削条件」と切削油剤の効果について「何故そうなるのか」という理由から,切削油剤を効果的に使うための考え方を解説した。杉原 達哉 氏(大阪大学)は「切削加工における被削材への分子吸着の効果の解明とその応用」とし,「切削加工現象のその場観察」で得られた結果に基づき,同現象のメカニズムや発現条件について説明,同現象を活用した新たな加工技術の構築に向けた展望を紹介した。北村 友彦 氏(出光興産)は「各種切削油による生産性向上と環境対応」とし,形彫り放電加工の加工時間短縮や精密ワイヤ放電加工の加工精度向上,難削材加工の工具寿命延長・高能率化などの油剤技術と切削油の環境対応技術を紹介した。
また熱処理パートでは,山本 徹朗 氏(出光興産)は「生産ラインで使用される潤滑剤が熱処理品質に与える影響と対策」とし,生産ラインで使用される各種潤滑剤の熱処理品質への影響とその対策について報告した。牧野 孔明 氏(愛知製鋼)は,「自動車に貢献する浸炭用鋼材開発の取組み」とし,高強度鋼により部品の小型化が可能で,燃費改善・CO₂排出量削減効果が期待できる自社開発鋼について紹介した。宮本 吾郎 氏(東北大学)は,「窒化予測技術の現状」とし,データ科学的手法を用いた機械学習モデルにより,物理モデルに立脚せず窒化挙動をモデル化する窒化予測技術の現状について紹介した。(’25 2/26)