2026年3月18日

「ハノーバーメッセ2026 プレスプレビュー」開催される

世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)2026」(主催:ドイツメッセ)が,2026年4月20日~24日までの5日間,ドイツ・ハノーバー国際見本市会場(写真1)で開催される。

ハノーバーメッセ国際見本市会場-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
写真1 ハノーバーメッセ国際見本市会場

開催まで約2ヵ月となった2026年2月25日(水),各国のジャーナリストを招いた「HANNOVER MESSE PRESS PREVIEW 2026」が開催され,本展示会の概要や注目ポイントが紹介された。

今回のメインテーマは,昨年から継続した課題である産業変革に加え,「産業界におけるAI」の実装に焦点が当てられている。

自律的な企業の壮大なビジョンのみならず,実際のユースケースをいかに工場現場に導入し,明日の利益に繋げるかが議論の中心である。

1.世界経済の変容とメッセの役割

ドイツメッセ社CEOのJ.ケックラー 氏(写真2)は,現在の産業界が「変革の岐路」に立っていると強調した。世界的な競争の激化,増大するコストの圧力,関税といった課題が山積する一方で,人工知能(AI)により幅広い分野にわたり,効率性,持続可能性,回復力,競争力の向上に役立つソリューションが出現している。25年前のインターネットの登場を例に挙げ,「今日,ソーシャルメディアを使わずに一日を過ごす人はいない」と振り返り,AIも同様に社会へ浸透すると話した。

ケックラー氏-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
写真2 ケックラー氏

2026年の注目のキーワードは「フィジカルAI(Physical AI)」。これは,AIが画面の中から実際の物理的な世界へと飛び出し,生産性や効率の向上に強力な影響を与えることを意味する。

本大会には,60ヵ国以上からアマゾン,マイクロソフト,シーメンス,シェフラーといったグローバル企業を含む約3,500社の出展を予定している。

2.パートナーカントリー・ブラジル

2026年のパートナーカントリーであるブラジルからは,ロドリゴ・スアレス 大使らが登壇した(写真3)。

ロドリゴ・スアレス氏-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
写真3 ロドリゴ・スアレス氏

ブラジルは南米最大の経済大国であり,電力構成の約90%を再生可能エネルギー源から供給するクリーンエネルギーの先進国。ブラジル輸出投資振興局(Apex Brazil)のアレックス・フィゲロ 氏らは,ブラジルがアグリビジネスの拠点であるだけでなく,飛行機(エンブラエル),自動車(フレックス燃料),ソフトウェアなどを設計・製造する技術大国であることを強調した。

今回のメッセでは,140以上の出展社と59のスタートアップを含む大規模な出展規模で,脱炭素化とデジタル化の変革における「信頼できる戦略的パートナー」としての存在感をアピールする。

3.パネルディスカッション:「現場へのAI導入の実践」

次に,「AIをいかに製造ラインに導入するか」をテーマにパネルディスカッションが行われた。AIプロジェクトの95%が経済的価値を生んでいないという現状に対し,実用的な導入方法が議論された(写真4)。

パネルディスカッションの風景-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
写真4 パネルディスカッションの風景

ボッシュ・コネクテッド・インダストリーズ最高経営責任者のノルベルト・ユング 氏は,「データ量は膨大に増えているのに,それが実際の利益や価値に結びついていない」という矛盾を指摘。その解決策として,バラバラなデータに「それが何を意味する数値なのか」という共通の定義(意味)を持たせて,部門を超えて活用できるように整理する重要性を強調した。ジャーマン・エッジ・クラウドのリリアナ・プチンカヤ 氏は,中小企業(SME)がデジタル化の第一歩を踏み出し,生産の非効率性を可視化することの重要性を強調した。アジャイル・ロボッツのスヴェン・パルセル 氏は,ヒューマノイドロボット「Agile One」を例に,AIと物理的な機械をいかに結びつけるかが鍵であると述べた。またAI導入により,生産上の問題解決を最大10倍加速させた事例なども紹介した。

4.ROBOTICS AWARD 2026の表彰

現代の製造現場で重要な役割を果たすロボティクスとフィジカルAIを称える「ROBOTICS AWARD 2026」のセレモニーが行われた。

審査基準は「イノベーションの度合い」「市場即応性」「社会・ビジネスへの利益」の3点で受賞者は,ドイツのGoodBytz社に決定した。

同社の受賞製品は,ファナック製の軽量産業用ロボットを統合した高度なロボットキッチンシステム。食品加工に対応した衛生的な設計に加え,独自のAI駆動制御により,複数の注文をインテリジェントに同時処理できる点が特徴。外食産業における深刻な労働者不足を解消し,病院や大学,企業施設などで高品質な食事を安定提供することを可能にする。ドイツメッセのケックラー 氏は,伝統的なロボット技術が美食や食品供給といった新分野へ拡大し,日常の効率と信頼性確保に貢献する好例として高く評価し,ステージで表彰した(写真5)。

ROBOTICS AWARD-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
写真5 ROBOTICS AWARD

授賞式後には出展企業によるミニブース展示が行われ,製造業の生産効率や自動化,エネルギー分野で注目すべき最新技術が公開された。以下に主要7社の出展概要を紹介する。(写真6)

ミニブースの風景-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
写真6 ミニブースの風景

注目企業の展示概要

Agile Robots (Hall 27, Stand J72)
https://www.agile-robots.com/en/

ドイツ航空宇宙センター(DLR)発のスタートアップで,トルク制御(力制御)による高感度なロボットアームや5本指ハンドを強みとする。

ハノーバーメッセ2026では,新型ヒューマノイドロボット「Agile One」を初公開する。AIモデルの訓練に「模倣学習(人間による遠隔操作データの記録)」を取り入れ,物理的AIの社会実装を加速させている。

Agile Robots-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
Bosch Industrial Additives (Hall 12, Stand E63)
https://www.bosch-softwaretechnologies.com/en/services/enterprise-services/manufacturing-excellence/digital_twin/

「Manufacturing Co-Intelligence(製造共同知能)」を掲げ,生成AIを実際の経済価値に変える支援を行う。7億個のデジタルツインを運用する実績を基に,部門ごとに孤立したデータを統合し,「データ成長のパラドックス(データは増えても価値が比例しない問題)」の克服を目指す。

現場では,熟練工の知見をエージェント化し,問題解決時間を最大10倍加速させるユースケースを紹介する。

Bosch Industrial Additives-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
cellcentric (Hall 11, Stand D22)
https://www.cellcentric.net/en-us

ダイムラー・トラックとボルボ・グループの合弁会社として,大型車両向け燃料電池(Fuel Cell)の産業化を推進する。

次世代システム「Next Gen」は,既存のディーゼルエンジンのスペースに収まりつつ,シングルブロックで375kWの出力を誇り,燃費を20%改善させた。

潤滑油や可動部品を必要としない燃料電池は,運送業者のメンテナンス負荷を大幅に軽減する。

cellcentric-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
Fraunhofer Gesellschaft Pavilion (Hall 11, Stand D33)
https://www.fraunhofer.de/

世界有数の応用研究機関。数多くのエンジニアや研究者を擁し,明日の産業ソリューションを概説する重要な役割を担う。ロボティクス・アワード 2026のファイナリストに選出されたフラウンホーファーIPAの「工作機械ロボット」はイヤホンでおなじみの「ノイズキャンセリング」の原理をリアルタイムでロボットに適用し,ロボットアームを長く伸ばした不安定な状態でも,振動のない(チャターフリー)高精度な加工を実現しており,生産現場の自動化を次のレベルへ引き上げる技術として注目される。

Fraunhofer Gesellschaft Pavilion-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
HARTING (Hall 27, Stand J50)
https://www.harting.com

産業用コネクティビティのリーダーとして,輸送,eモビリティ,再生可能エネルギーなどの分野で欠かせない「データ,信号,電力」の伝送技術を展示する。オール電化社会に向け,持続可能でインテリジェントなエネルギー供給と省資源生産への貢献を実証する。

HARTING-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
igus SE&Co.KG (Hall 13, Stand C60)
https://www.igus.eu/

「潤滑剤不要」の高性能ポリマー(モーションプラスチック)により,あらゆる可動部の技術向上とコスト削減を提案する。

注油不要でメンテナンスフリーなプラスチック部品は,ヒューマノイドロボットの軽量化や耐久性向上にも寄与している。また,低コストで自動化を実現する「RBTX」プラットフォームを通じて,中小企業の自動化導入を支援する。

igus SE&Co.KG-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
Riiko (Hall 16, Stand F15, (12))
https://www.riiico.com/

現実キャプチャとAIを用いて,既存工場(ブラウンフィールド)を短時間で3Dモデル化する技術を提供している。

レーザースキャンデータからAIが機械や壁を自動分類し,デジタルツインを作成することで,生産ラインの変更やシミュレーションを容易にする。

NVIDIAの「オムニバース」とも連携し,現実とデジタルを繋ぐ基盤として機能する。

Riiko-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー
Schaeffler Technologies (Hall 13, Stand E60)
https://www.schaeffler.com/fork/

駆動技術からエネルギー生成,持続可能なサービスソリューションまで,モーションの全領域をカバーする。軽量ロボットやコボット向けの革新的なベアリング,非接触で正確なトルク測定を可能にする「TorqueSense」に加え,ヒューマノイドロボット向けの主要コンポーネント(ギアボックス,アクチュエーター等)を紹介する。(’26 3/18)

Schaeffler Technologies-ハノーバーメッセ2026プレスプレビュー

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