2026年1月7日

「第84回切削油技術研究会総会」,開催される

アーステック

切削油技術研究会(会長:佐橋 稔之 氏,住友電気工業)は,2025年12月5日(金)アルカディア市ヶ谷(東京都千代田区)にて「第84回切削油技術研究会総会」を開催した。

同研究会は1954年の創設以来70年間,現場に立脚した加工技術者の集団として,産学官の垣根を越え,共同調査・研究を重ねてきた。その活動を通じて技術者の育成と日本のものづくりへの貢献を目指しており,その成果は「穴加工皆伝」「研削加工皆伝」「切削油剤ハンドブック」「ミーリングハンドブック」などの刊行物として発刊されている。

第84回となる今回は,「切削加工の品質向上にむけた形式知化とデジタル技術の活用」をテーマに活動報告が行われた。形式知化をキーワードに3つの実験報告と1つの調査報告を実施し,切削加工の品質課題である「残留応力」「バリ」「面粗さ」を対象とした取り組みが報告された。

実験報告1:実験計画法を用いた残留応力予測では,薄肉部品の加工における残留応力(加工後の製品の疲労強度や耐久性に影響する)の正確な予測が難しく暗黙知に頼ってきた現状に対し,加工条件等から残留応力を予測するモデルの構築を通じて,暗黙知の形式知化が試みられた。効率的な予測モデル構築手順や,残留応力予測に必要な特徴量(機械的要因としての切削力測定値や熱的要因の代用値)に関する解析結果が示された。

実験報告2:バリへの対応技術~穴あけ加工のバリ予測~では,実製品形状でよくみられるクロス穴のバリ対策の困難さに着目し,高速度カメラを用いてバリ発生メカニズムを追究するとともに,曲面におけるバリ発生傾向を調査し形式知化を目指した。この検証により,工具の片部を先に貫通させるような状況を作り出すことで不安定なバリの発生を抑制されることが見出された。

実験報告3:続・フライス加工における上手な切削油剤供給方法の提案では,2024年からの継続研究として,フライス加工における切削油剤の供給流速が加工面品位に及ぼす影響を解明した。流速を速くすることで,切削油剤が刃先近傍まで到達しやすくなり,凝着の成長抑制を通じて面品位向上に繋がるという仮説を立証した。また,加工現場で取り組みやすい実用的な供給方法として,外部給油(供給範囲の広いノズル)および内部給油(セットボルトへの穴あけ追加)での吐出口の工夫が提案された。

調査報告:ものづくりにおけるデジタル技術の活用状況の調査では,形式知化された成果を生かす手段として重要な役割を果たすデジタル技術について,設計,生産準備,生産の各領域における活用実態をアンケートおよびインタビューを通じて調査した。その結果,多くの企業がフェーズ3(未経験者でも作業可能で,人の判断が少ない状態)を目指しているものの,新しいデジタル技術の導入に成功している企業は少ないことが判明し,デジタル技術導入の課題と課題解決のための取り組み方法が明らかにされた。

また,特別講演では,浜野製作所 代表取締役会長 CEO 浜野 慶一 氏が登壇し,「東京・下町・町工場の挑戦」と題して,ものづくり企業が直面する課題などを紹介した。(’26 1/7)

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