2025年12月24日

TRAMI,「第8回公開フォーラム」開催される

アーステック

自動車用動力伝達技術研究組合(Transmission Research Association for Mobility Innovation,TRAMI,理事長:平工 良三 氏・日産自動車)は,2025年11月18日(火),東京都立産業貿易センター浜松町館(東京都港区)で「第8回公開フォーラム」を会場・オンラインのハイブリッド形式で開催した(写真1)。

会場風景-TRAMI,第8回公開フォーラム
写真1 会場風景

同フォーラムでは,電動パワートレイン(PT)の小型化を実現する50,000rpm超の超高回転化をテーマとし,日本の自動車産業の競争力向上に貢献するための具体的な研究戦略を発表した。

平工 理事長は開会の挨拶で,OEMの立場からモーターを従来比で大幅に高回転化させた際の「真の製品価値」を適正に評価する重要性を強調。高回転化がもたらす価値については様々な視点があるものの,そこには新たな価値を満たす可能性が確実に存在すると確信しており,その未来を参加者と共に切り拓いていきたいと話し,TRAMIの研究活動を通じて,日本の技術が「車の革新」に直接貢献できるよう,全力で邁進していくと語った。

平工理事長の開会挨拶-TRAMI,第8回公開フォーラム
写真2 平工理事長の開会挨拶

来賓の挨拶では中嶋 佑佳 氏(経済産業省 自動車課 課長補佐)は,自動車産業が海外でのEV普及加速などにより激動の変革期にあると指摘。カーボンニュートラルへの対応のみならず,デジタル化を通じた「新たな価値」の創造が重要であり,その中でTRAMIが進める産学連携による最先端研究の意義を高く評価した。本日の最新知見を各社が持ち帰り,技術革新を通じて「車の次なる価値」として具現化することへの強い期待を述べた。

次に特別講演で相原 健人 教授(法政大学)は,「若手研究者が考える日本の機械要素技術の今後について」と題し,国内の研究活動が縮小する現状に警鐘を鳴らした。歯車などの成熟した分野は,資金獲得審査で「新規性」が薄いと見なされがちな実態を指摘。対照的にAI活用が進む海外の動向を示し,停滞打破には研究資金の多様化や次世代の人材育成,そして産学官の強固な連携が不可欠であると語った。

TRAMI講演では斉藤 康 運営委員長が,持続可能な社会に向けた電動車普及には商品力の向上が不可欠だと指摘。動力伝達技術の「超高回転化(5万rpm超)」による圧倒的な小型化を追求し,走行抵抗の低減や省資源化を通じてCO₂削減を実現すると述べた。研究テーマの一つである「超小型電動パワートレーン」では,小型化による省エネルギー・CO₂削減,材料削減によるサプライリスク低減,車両設計自由度の拡大による新たな価値創出を狙う。この研究で日本の自動車産業の優位性を確立したいと話した。

TRAMI研究方針では森 淳弘 運営委員が,研究の進め方を「基礎→実証→市場投入」として整理し,TRAMIとしては特にユニット/サブユニット段階での実証を重視すると説明した。各社が製品開発へ活用できる「使える実現技術」をアウトプットと位置づける。高回転化では遠心力やアンバランス,潤滑・冷却,騒音・振動などの課題が顕在化する。さらに車速が変わらないため,高回転に対応する一方で高減速比が必要となり,遊星機構など未経験領域の課題が増える。森 氏は,まず「何が起きているか」を正確に捉えるメカニズム・モデル化を重視し,その上で性能改善を進める方針を示した。2026年度は30テーマ中11テーマが新規であることも紹介した。

宮﨑 剛枝 運営委員は,TRAMIに参画するメリットを「3つのうれしさ」として解説した。第一にOEMの課題認識やニーズといった動向の把握,第二に高度な専門知識の習得,そして第三に大学や他企業との交流による人脈拡大。これらを通じた技術人材の育成や事業拡大は,TRAMIの理念である産業力の底上げに直結する。研究成果の自社活用も可能であり,日本の自動車産業を支えるべく,組合への積極的な参画と活用を呼びかけた。

藤井 透 専務理事は第1部閉会の辞で組織の壁を超えた熱い議論が展開されていることに深い感謝を述べた。

また第2部では,来年度に向けた全32の研究テーマがポスターセッション形式で公開され,閉会まで熱心なディスカッションが続いた。(’25 12/24)

ポスターセッションの風景-TRAMI,第8回公開フォーラム
写真3 ポスターセッションの風景

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