2025年2月17日・18日,ハノーバーメッセ2025プレスプレビューの開催直前に,産業用コネクティビティを提供するハーティング テクノロジーグループが,毎年恒例のプレスツアーを開催した。会場は,ドイツ・ニーダーザクセン州オスナブリュックにあるハーティング イノベーションハブで,国内外のジャーナリストが招かれた。
ハーティングはドイツ・エスペルカンプに本社を構え,42の販売拠点,14の生産施設,7つの研究開発拠点を持ち,約6,000人の従業員が世界中で活動している。同社のコネクティビティソリューションは,輸送,電気自動車,再生可能エネルギー,自動化,機械工学といった幅広い産業分野で,「データと電力」を伝送するために活用されている。
オスナブリュックにあるコッペンラート・イノベーションセンター(CIC)には,18の研究機関と企業が拠点を構え,農業やヘルスケア分野におけるAIソリューションの研究開発を進めている。ハーティングもCIC内にスマートファーミングとAIに特化したイノベーションハブを設置し,各産業に向けた次世代コネクティビティソリューションの開発に取り組んでいる。
「この地域には農業機械メーカーが多く,CICにもオフィスを構えています。お客様やパートナー企業の近くにいることは,イノベーションにおいて非常に重要です。また,オスナブリュック大学,オスナブリュック応用科学大学,ドイツ人工知能研究センター(DFKI)といった研究機関もCICに参画しており,ハーティングはこれらの機関と連携しています」と同社は説明する。
ハーティングの施設内にはコワーキングスペースも設置されており,社内外のワークショップの開催や,パートナー企業・顧客との協業の場として活用されている。
プレスツアーでは,研究施設の見学に加え,「オール電化社会を支えるオートメーション技術」に関するプレゼンテーションが行われた。また,ハノーバーメッセ2025の主要トピックについても紹介した。
今回のハノーバーメッセのテーマは,「テクノロジーで未来を形作る」で,効率的で持続可能な産業の実現が主要な議題となっている。ハーティングはこのテーマに基づき,「オール電化社会」の実現に向けた取り組みを発表した。
オール電化社会とは,すべてのエネルギー需要が再生可能エネルギー由来の電力でまかなわれる世界を指す。この社会を実現するには,異なる産業(セクター)間の連携と,各セクター内のネットワーク化が重要となる。ここで言うセクターとは,産業,エネルギー,モビリティ,インフラの4つであり,これらが相互につながることで,エネルギーとデータがシームレスに流れる社会が実現するとしている。
エネルギー分野
エネルギー分野では,電力の生成,伝送,貯蔵,利用の各プロセスを支えるコネクティビティ技術が紹介された。中でも,グリーン水素の活用は,脱炭素化のカギを握る重要な技術と位置づけられている。ハーティングのコネクティビティソリューションは,堅牢で信頼性の高い技術を提供し,エネルギー転換に貢献している。
モビリティ・鉄道分野
モビリティ分野では電動化が進むことで,自動車だけでなく,建設,輸送,農業,鉱業,船舶といったさまざまな領域で電動駆動の採用が拡大している。デジタル化の進展に伴い,データ転送速度の向上が求められており,モビリティ分野ではこうした要件に適したソリューションが必要とされる。
ハーティングは,充電ソリューションやケーブルアセンブリを提供するリーディングカンパニーとして,省スペース,エネルギー効率,堅牢性,利便性,ユーザーフレンドリーな接続性を備えた幅広いコネクタを展開している。
産業分野
産業分野ではIEC 61076-2-010規格に準拠した「M12ケーブルソリューション(内外プッシュプルインターロック付き)」が紹介された。これは,機械・ロボット分野をはじめとする多様な産業用途に適用可能な技術であり,産業環境におけるデバイスとモータの接続において高い柔軟性を提供する。
さらに,デバイス内部の配線やデバイス間の相互接続において,一貫した組み立て済みソリューションを採用することで,生産ラインの簡素化,組み立て時間の短縮,さらなる効率化が可能になる。
持続可能な製品開発
「リサイクル可能な製品は,必ずしも高価である必要はありません。適切な材料を選択し,リサイクル時に容易に分別できる設計を採用することで,持続可能性を向上させることができます。またリサイクルだけでなく,製品の耐久性や修理のしやすさも重要なポイントです。特に鉄道分野では,すべてのハーティング製品が徹底的な耐久性試験を受けており,すべての部品が個別に購入可能なため,修理が容易です。このように長寿命で修理しやすい製品は総所有コスト(TCO)の削減につながります。さらにEUの環境政策「グリーンディール」により,今後多くの持続可能性対策が法制化される見込みで,こうした規制にも対応した製品開発を進めています。」とハーティングは説明する。(’25 3/19)