2024年12月18日

自動車のトライボロジーに関するシンポジウムセッション開催される ~「トライボロジー会議 2024 秋 名護」で添加剤技術研究会と自動車のトライボロジー研究会が共同開催~

アーステック
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日本トライボロジー学会の「添加剤技術研究会」(主査:佐藤 剛久 氏)と「自動車のトライボロジー研究会」(主査:遠山 護 氏・豊田中央研究所)は,2024年10月30日(水),「トライボロジー会議 2024 秋 名護」で「電動車用潤滑油最前線―EV,HEV用潤滑油の現状と今後の展開―」と「カーボンニュートラルに挑む自動車のトライボロジー技術の最前線」のシンポジウムセッションを共同で開催した。

添加剤技術研究会は添加剤技術に関連する技術者が意見交換し討議する場として1987年に設置,地球環境問題が深刻化する現代,環境負荷低減の取組みなど次世代の添加剤技術の開発に向けた調査研究を行っている。研究会の委員は大学や公設試験研究機関など研究機関のほか,潤滑剤・添加剤・基油メーカーや商社などで構成されている。

また,自動車のトライボロジー研究会は,自動車技術会の特設委員会を引き継ぐ形で1994年に設置,自動車のトライボロジーに関する幅広い技術交流と委員の研鑽を目的とした話題提供や討議を行っている。

今回は両研究会の共同企画として「自動車のトライボロジーに関するシンポジウムセッション」を開催,佐藤 氏,遠山 氏から次のように趣旨が説明された。

自動車のCO₂排出量の低減あるいはゼロエミッション化に向けて電動車(EV,PHV,HEV,FCVなど)の普及が世界的に進展している。2023年の乗用車販売に関して,中国におけるEV,PHV(新エネルギー車)の割合は約35%となっている一方,国内においては電動車の割合は過半数を超えたもののEVの割合は約4%に留まっている。また,欧州,米国のEVの割合はそれぞれ15%,8%となっているが,欧州でのHEV+PHVの割合は約35%に達しており,EVの増加に加えて,既存インフラで低CO₂排出となるHEVが増加する傾向もみることができる。EV,HEVにはモータ,インバータ,トランスミッションを一体化したE-Axleが装着されており,E-Axle専用フルードの開発や規格化が進んでいる。HEVは一般のエンジン車に比較して,実用運転域でのエンジン回転数・負荷分布が異なり,HEVの運転条件を考慮した省燃費エンジン油規格も制定された。

そこで午前中のセッションでは,電動車用潤滑油の基油・添加剤技術,規格化動向などに焦点をあて,電動車用潤滑油の現在と今後のあり方に関して広く議論する場を提供する。午後のセッションでは,カーボンニュートラルに対して,水素燃料,バイオ燃料や合成燃料などの内燃機関(ICE)への利用,各ユニットの機械効率の向上や,ユニット・部品のReduce(削減),Reuse(再利用),Recycle(再資源化)という3Rに配慮した改善も重要であることから,電動車化以外にもカーボンニュートラルに貢献できる自動車のトライボロジー技術に焦点をあて,技術開発の現状と今後のあり方に関して広く議論する場を提供する。

佐藤主査の挨拶-自動車のトライボロジーに関するシンポジウムセッション
佐藤主査の挨拶
遠山主査の挨拶-自動車のトライボロジーに関するシンポジウムセッション
遠山主査の挨拶

会場では講演と活発な質疑応答が行われ,講演後には場所を技術交流会の場に移し,参加者同士による議論が行われた。当日のプログラムは次の通り。

  • 「電動車用潤滑油最前線―EV,HEV用潤滑油の現状と今後の展開―」
     【基調講演】「トライボロジー分野におけるTRAMIの活動」 坂野 渓帥 氏(本田技術研究所)
     ○「電気インピーダンス法による歯車噛合部の油膜形成と破断の実動作下計測」 大久保 光 氏(横浜国立大)
     ○「電動車用超低粘度トランスアクスルフルードの開発」 岩見 雅弘 氏(トヨタ自動車)
     ○「e-Fluid Effects Made Visible Trough Full-scale e-Axle Testing Alex Wang,」 樋口 智也 氏(日本ルーブリゾール)
     ○「軸受の耐電食性を向上するグリース配合設計技術に関する研究」 山下 侑里恵 氏(ジェイテクト)
     ○「銅腐食防止効果に優れた新規硫黄系添加剤の開発」 松枝 宏尚 氏(DIC)
     ○「電動車用エンジンオイルへの水混入による低温固化に対する乳化剤の効果」 舛川 諒 氏(ADEKA)
     ○「Gr.3ベースオイルの需要展望」 垣内 健吾 氏(SKエンムーブジャパン)
  • 「カーボンニュートラルに挑む自動車のトライボロジー技術の最前線」
     ○「再精製基油を用いた自動車用低粘度省燃費エンジン油の検討」 渡部 裕太 氏(シェルルブリカンツジャパン)
     【基調講演】「内燃機関搭載車両でのCN実現を目指すAICEの取り組み」 北村 高明 氏(AICE)
     ○「水素エンジンの燃焼とトライボロジ―における課題」 三原 雄司 氏(東京都市大)
     ○「不均質成膜による自動車エンジン摺動面の表面改質」 宇佐美 初彦 氏(名城大)
     ○「カーボンニュートラルに貢献する省燃費エンジンオイルの規格化 – JASO GLV-2規格」 山守 一雄 氏(トヨタ自動車)
     ○「水素燃焼エンジンを模擬したオイル劣化環境下におけるすべり軸受に発生する腐食現象」 城谷 友保 氏(大同メタル工業)
     ○「CFDオイル流れ解析とレール間形状最適化による2ピースオイルリングのオイル排出性向上」 阿部 優士 氏(TPR)
     ○「高温高圧水含有エタノール環境下におけるステンレス鋼の摩耗に及ぼす水と溶存酸素の影響」 梅原 徳次 氏(名古屋大)
     ○「高温高圧含水エタノール中におけるSi含有DLCの摩耗特性」 細川 征嗣 氏(デンソー)
     ○「サステナブル社会への表面改質技術の貢献」 中山 隆臣 氏(日本パーカーライジング)  (’24 12/18)
シンポジウムセッションでの講演風景-自動車のトライボロジーに関するシンポジウムセッション
シンポジウムセッションでの講演風景
技術交流会の風景-自動車のトライボロジーに関するシンポジウムセッション
技術交流会の風景

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