インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(以下,IVI)は,製造業が連携してカーボンニュートラルへ向けた取り組みを加速させるために,カーボンフットプリント(CFP)の算出と共有に関するホワイトペーパーをまとめ,公開した。また,そこで示す内容に基づいて実際にCFPを企業間で交換する手段として,「CTNS(トラストなカーボンチェーン・ネットワークサービス)」を構築し,2024年4月より運用を始めた。
これまで,事業者単位でのCO₂排出量を算出することは比較的容易だったが,事業者内で実際に消費したエネルギー(スコープ1と2)と,調達した原材料に起因するCO₂排出量(スコープ3)とを合算し,出荷する製品単位でのCO₂排出量を算出するには,大規模な情報システム投資が必要であった。今回新たに開発したCTNSは,大企業だけでなく,中小企業もスモールスタートでカーボンニュートラルへの取組みを始めることを可能としている。
また,特に製造業は,取引先に提示するCFPについて,その算出根拠となる工場内部の設備稼働データは,自社のノウハウとして容易に開示できない。これに対して,CTNSでは,コネイン連携基盤(CIOF)により,必要以上のデータ開示することなくCFPに関するトラストなデータ連携を可能としている。
CIOFとは,2017年度に経済産業省が提唱したコネクテッドインダストリーズの概念を,ものづくり・ロボティクス分野で具体化するための補助事業によって開発された企業間データ連携基盤。工場から得られる設備稼働データや品質管理データなどを取引先との2者間でトラストに共有するためデータ連携サーバ,データ連携マネージャ,そしてデータ連携ターミナルで構成されている。
CTNSの利用料金は,2024年度は無料,2025年度以降は利用状況に応じて月額1万円からのサブスクリプション提供となる。すでに実証実験としてIVI会員企業を中心に大企業2社,中小企業3社で部分的に導入しており,今後2024年度に50事業者,2030年までには20,000事業者の導入を目指している。
- ホワイトペーパー「CTNS(Carbon Trusted Network Services)におけるカーボンフットプリントの算出と共有」
https://iv-i.org/wp-content/uploads/2024/04/IVI_White-paper_CTNS_20240314r3.pdf (’24 5/29)