神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)は2023年12月8日(金),「2023年度トライボロジー技術フォーラム~低炭素社会の実現に向けたトライボシステム開発~」をリアル会場(KISTEC所内,神奈川県海老名市)およびオンライン(Zoom)のハイブリッド形式で開催した。
同フォーラムでは,本田 知己 氏(福井大学)が「超低環境負荷潤滑剤を目指した糖アルコールの潤滑性」のテーマで,環境に優しい新たな潤滑剤として食品成分である糖アルコールについて,NSF H1規格の食品機械用潤滑油と比較して同程度,またはそれ以上に良好な摩擦特性を有する糖アルコールを見いだしたこと,また,摩擦摩耗試験とレオロジー測定の結果をもとに,低摩擦発現機構の解明を試みた結果について最新のデータを含めて概説した(写真)。
また,加納 眞 氏(KANO Consulting Office)が「環境にやさしい潤滑剤とDLCを用いたグリーントライボロジー技術動向」のテーマで,環境にやさしい生分解性潤滑油やアルコール水溶液とDLCコーティングの組合せによる超低摩擦特性について,すでに欧州では実量産適用に向けた国家プロジェクトが実施されていること,その適用ターゲットの一つが歯車となっていること等について紹介した。
また,KISTECでは,硬質薄膜の機能性評価試験を実施していることから,吉田 健太郎 氏(KISTEC 機械・材料技術部)が「連続荷重増加すべり試験および潤滑下の試験によるダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜の評価技術について」のテーマで,連続荷重増加すべり試験を用いたDLC膜の損傷形態の評価,およびDLC膜と潤滑剤含有成分との相互作用による反応膜の形成と低摩擦化の関係について解説した。
講演会終了後に,会場参加者のみ,KISTECのトライボロジー関連設備の見学会が行われた。(’23 12/20)