ドイツの特殊化学品メーカー,ランクセスは,電動スポーツカーの充電コントローラ部品に使用される,熱伝導性と電気絶縁性を備えたポリアミド6(PA6)コンパウンド「デュレタン®(Durethan®)BTC965FM30」を提供している。一例として,ドイツ南部に本拠を置くスポーツカーメーカーの,電気自動車の充電コントローラ内冷却エレメントが同コンパウンドにより作られており,充電コントローラの過熱を防止するだけでなく,難燃性,耐トラッキング性,および設計に関する厳しい要求事項を満たしている。
充電コントローラは,充電プロセスにおいて,バッテリーの過充電を防止するため,充電電圧や電流の制限を行う。このスポーツカーの充電コントローラのプラグ接点には,最大48アンペアの電流が流れ,充電中に大きな熱が発生するが,同社のポリアミドには,この熱を熱源から効率的に切り離すことができる熱伝導性の特殊な鉱物粒子が使用されており,この粒子はコンパウンドに,メルトフロー方向(面内方向)で2.5W/m・K,メルトフローに直角な方向(面直方向)で1.3W/m・Kの高い熱伝導率を与えている。
さらに,ハロゲンフリーで難燃性のポリアミド6(PA6)素材を使用しているため,この冷却エレメントは高い難燃性を実現し,高い耐トラッキング性は安全性の向上にも貢献している。この耐トラッキング性により,設計者は沿面電流による短絡やデバイスの欠陥を懸念することなく,よりコンパクトに電気アセンブリを配置できるため,コンポーネントをより自由に設計することができ,この冷却エレメントでも,ガイドとリブに加え,プラグ接点を収容するための空間を狭い間隔で6つ配置することが可能となった。
同コンパウンドは熱伝導性フィラーの含有量が重量比68%と高いにもかかわらず,良好な流動性を有しており,プラグ,ヒートシンク,熱交換器,パワーエレクトロニクス用取り付けプレートなど,電気自動車のバッテリー部品にも使用できる可能性を持つ。(’22 8/17)