ジヤトコは,クルマのトランスミッションなどで動力伝達に使われる湿式クラッチの摩擦特性と耐久性を高次元で両立する表面加工技術を新たに開発した。
自動車用の湿式多板クラッチは,スチールプレートと呼ばれる金属板と,フェーシングプレートと呼ばれる金属板に摩擦材を貼り合わせたものを交互に配置した構造になっている。同技術は,バイオミメティクス(生物模倣)としては珍しいカエルとキリギリス,2種類の生物の足裏に配列された六角形模様の微細構造をヒントに,クラッチのスチールプレートの表面に排油性能を高める特殊加工を施すもの。キリギリスの足には接触面とのスティックスリップ現象(静摩擦力が作用する状態と動摩擦力が作用する状態が交互に発生することによって起きる振動現象)を抑制し,滑らかな摩擦を作り出す機能,カエルには濡れた接触面をグリップする機能があると考えられており,この両者に共通する六角形の形状をクラッチのスチールプレート側に加工することで,低温時の伝達安定性やクラッチの耐久性を高め,摩擦特性の安定性や耐久性を大幅に向上させることができる。
同社は今後,AT / CVTや電動車両用のe-Axleへの採用を検討していくほか,幅広くモビリティ関連の製品にも適用を検討していく。(’22 6/15)