島津製作所は,走査型プローブ顕微鏡「SPM-Nanoa」を国内外で発売した。同製品は,高感度・低ノイズの検出光学機構の採用によって高分解能観察を実現しつつ,光学調整と観察条件設定の作業を自動化したもので,走査型プローブ顕微鏡(SPM)の中級機種となる。
SPMは,先端が10nm(ナノメートル)程度の探針(プローブ)を試料に近づけて,試料と探針間の力学的・電磁気的な相互作用力を検出しながら走査し,試料表面の三次元形状や物性情報を取得する。電子線を使う電子顕微鏡は真空中での観察が必要になるが,SPMは大気中や溶液中で利用可能。また,高分子材料や電池材料,ナノ材料などの形状観察や物性評価に利用でき,ナノテクノロジー・ナノサイエンスにおける多様な課題に対応が可能となる。従来の装置ではユーザーが行う光学調整や観察条件設定に経験や専門知識が必要であったが,これらの作業を自動化することにより,操作に慣れていないユーザーでも簡単に高分解能の観察データを取得できるようになっている。
各種機構の改良によって,SPM観察の準備からデータ取得まで従来30分程度を要していたが,同製品では5分で完了でき,従来4時間以上かかっていた弾性率分布の測定も,専用ソフトウェア(オプション)を利用すれば約20分で済むなど,測定時間の大幅な短縮も可能となった。(’21 3/17)