出光興産は,2018年3月8日(木),都内ホテルで「2018年販売店合同ミーティング」を開催した。同ミーティングに先立ち,出光全国大会が開催され,全国出光会の新会長に清家 壽人 氏(清家石油代表取締役)の就任が決定した。同ミーティングでは,2018年4月の就任が発表されている月岡 隆 新会長(現 代表取締役社長),木藤 俊一 新社長(現 代表取締役副社長)が挨拶を行った。
月岡 隆 社長は,冒頭で自身の社長就任当初を振り返り,「私は5年前に,2013年度を起点とする第4次中期経営計画のスタートを機に,当時の中野社長の跡を継いで,社長に就任致しました。この4次中計のメインテーマとしてベトナムニソンプロジェクトをはじめとする海外事業・資源事業および高機能材事業への戦略投資を通じて持続的な成長基盤をつくることを目指しました。また日本のエネルギーセキュリティに貢献し続けるために,国内基盤事業の強化,即ち国内販売網の強化と物流の強化に先頭に立って取り組むことをお約束いたしました。しかし,実際には2013年度~2015年度の4次中計では大変厳しい舵取りを余儀なくされました。需要減退が継続する中での,業界内での不毛な消耗戦に加えて原油価格の大幅な下落により,元売だけでなく,小売段階でも事業継続さえままならないような状況になっていました。当社も『低収益』と『減損』という二重苦を浴びることになり,2014年度,2015年度と2期連続の赤字を計上いたしました。このとき私はこのままでは『日本のエネルギーセキュリティへの貢献』という使命を果たせない,安定的な事業基盤が失われてしまうという危機感を強く抱きました。そこで,業界の構造的な問題を根本的に解決するべく,2015年7月,昭和シェル石油さんとの経営統合こそが最善の選択という決断をいたしました。」と述べた。
昭和シェル石油との経営統合については,「経営統合は道半ばではございますが,出光が一歩踏み出したことで業界再編が進み,事前に想定していた通り,業界の安定,また元売段階だけでなく流通段階での公正な競争環境の実現に近づいており公正透明なマーケット指標の導入と併せて,業界の構造的な問題を解決する上で,この道しかなかったとの思いを強くしております。
昭和シェル石油さんとの実質的な統合は『ブライターエナジーアライアンス』を中心に具体的に進んでおり,もはや両社が分かれて別の道を歩いていくことは考えられません。アライアンスの取り組みは着実に実績を積み上げており,シナジー効果として3年目で250億円としていた従来目標を300億円に引き上げると共に2018年4月からは両社で一部の職場の一体化をすすめ,共に仕事をすることとしています。さらにアライアンス強化の観点から,昭和シェル石油さんと役員クラスでの相互交流を行います。引き続き目標に向かっての成果を着実に広げ,この成果をステークホルダーの皆様に示すことで統合への道筋を確実なものにしてまいりたいと考えています。」と語った。
経営統合以外の課題のうち,燃料油事業の海外展開の目玉であるベトナムニソン製油所については,「2018年2月28日に通油準備が完了し,4月以降に製品出荷が開始となる見込みです。また財務体質の改善については昨年実施した公募増資により一定の成果を上げることができました。」と述べた。
今後の課題については,「残された最大の課題は地球規模で大きく時代が変わるであろう2030年あるいは2050年という時間軸を意識しつつ,当社としてどの方向に進むべきか,言い換えれば次の出光をどのように作っていくかを決め,具体的に踏み出していくことだと認識しています。その様な課題認識の中で,2050年を見据えた長期環境想定からバックキャストし策定した第五次中計を2018年3月末に発表いたします。新しい中計のスタートに当たり,私は会長として引き続き経営統合に責任を持ち,中計の実行となる『次の出光』づくりは是非新社長を中心に一丸となって進めてもらいます。」と述べた。
木藤 俊一 副社長は,冒頭で清家 新会長と共に出光,出光会を盛り上げていきたいと意気込みを述べ,現時点での問題意識と「次の出光」について課題を3点挙げた。
「第1に,基盤事業の更なる強化です。特に国内でともに事業を展開してきた販売店さん,協力会社さんの皆さまとのパートナーシップを更に強固なものにしていきたいと考えております。副社長就任以来,全国を回らせて頂き,皆さまと親しくお話をさせていただき,石油製品の需要が減少していく厳しい環境にあっても,各地域で地元に密着し,地域の生活を支えておられる販売店さんが,勝ち残っていらっしゃる姿に感銘し,とても心強く思いました。
また,出光大家族の一員として明るく前向きに取り組まれる様子を感じ,販売店の皆さんと出光の絆はまさに宝,他社にはない財産であるとの思いを強くし,同時にこのネットワークを生かして,ともに次の事業を考えていくことが元売としての使命だと身の引き締まる思いがいたしました。元売会社として,様々な変化を先取りした新たな提案をしながら,各地の販売店さんと共に考え事業を推進していきたいと考えています。」
「第2に2030年以降も隆々とした企業グループ,『強い元売』であり続けるための成長戦略を策定し,将来の布石を打つことです。成長戦略の中心になるのはこれまでも力を入れてきました潤滑油,電子材料,機能化学品,アグリバイオ等の高機能材事業であります。この高機能材事業の利益をしっかりと拡充していく必要があると考えています。
また,世界に目を向けますと,今後まだまだ石油需要の伸びる国,地域が多くあります。アジア地域においては一次エネルギーとしての石油の需要が旺盛であり,環境に配慮しながら,どう地域への安定供給を図っていくか。これも重要な成長戦略であると考えております。この2つの成長戦略を軸に,販売店の皆さんにとって『頼りになる強い元売』であり続けるための努力をしてまいります。」
「第3に当社の持続可能性,すなわちサステナビリティに関する取り組みについては,化石燃料を主力の製品としている当社が『地球市民』として社会的責任をどのように果たしていくべきかを考え,今後さらに激変するであろう環境変化に対応できる多様性の確立が,当社グループの持続的成長のためには不可欠です。
とは言っても,これは,出光が創業以来理念として大切にしていることそのものなのです。事業を通じて人を育てる。社会に貢献する。お客様を大切にする。等々の脈々と流れる理念を実践しているバックボーンがあります。
そこで,2018年4月にサステナビリティ戦略の専門部署を設置し,今までやってきたこと,これから取り組んできたことを良く整理して推進してまいります。多様な価値観,人生観を持つ人の力を結集し,将来への布石と足元のエネルギー供給という社会的使命を全うするいわゆる二重思考,複眼を持った経営をする必要があると考えています。」と述べた。
また今後については,「現在3月下旬に2018年を起点とする第5次中期経営計画の公表を予定しております。その中で本日の内容をもう少し詳しくお話していきたいと考えております。
結びにもう一度申し上げます。全国にまたがる出光グループのネットワーク,販売店の皆さんとの『絆』は他社には無い出光にとって最も大切な財産です。
昨今,EV,AI,IoT等の進展が叫ばれています。今後技術革新によって,石油やエネルギーだけでなく,人々の生活が大きく変わる可能性はございます。しかしながら,お客様のニーズや価値観が多様化していくなかで,皆さんが担っている『お客様との接点』が大事であることは不変であり,むしろますます重要になっていきます。
私たちは,引き続き出光大家族として,販売店さんと共にお客様の多様なニーズに対応し,2030年にも,2050年にも『ニッポンにエネルギーを』届け続けます。
さらに,次の出光をつくるための新規事業として,地域のお客様を総合的に支えるサービスや地方創生に資する様々な取り組みにも挑戦したいと考えています。2018年4月より,国内の販売体制を一新し,強化いたします。新しい体制のもとで,各地域の統括支店長,課長,担当と一緒になってそれぞれの地域特性に合った店作りを進めていただきたいと思います。」と述べた。(’18 3/20)