2017年7月12日

SIP「革新的燃焼技術」第3回公開シンポジウム,開催される

ブルカージャパン ナノ表面計測事業部
アーステック

 内閣府および科学技術振興機構(JST)は,2017年7月6日(木),一橋大学一橋講堂(東京都千代田区)で,SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の「革新的燃焼技術」に関する第3回公開シンポジウムを開催し,467名が参加した(写真1)。
 SIP「革新的燃焼技術」では,最大熱効率50%を実現するための革新的技術の研究開発を行うとともに,世界トップレベルの内燃機関研究者の育成と持続可能な産学連携体制の構築に取り組んでいる。5年間のプロジェクトも本年は4年目と終盤に入り、ガソリン燃焼チーム、ディーゼル燃焼チーム、制御チーム、損失低減チームの4チームから最新の研究成果が発表された。

当日は,SIP後を見据えた活動を産学の関係者が紹介する「SIP革新的燃焼技術を将来へ繋ぐ」と題した企画セッション,および、合計84のサブチームがポスターセッション(写真2)で最新研究成果を発表した。
開会の挨拶で,SIPプログラムディレクターの杉山 雅則 プログラムディレクター(トヨタ自動車)は,「4年目となる今年は、これまで出てきたアイデアを実証して50%に近づけていく年である。」と述べた(写真3)。また、内燃機関研究の活性化や産学連携体制の構築を掲げてスタートしたこのプロジェクトは、産学ネットワークの拡大と深化が大きく進んだ。杉山PDは,SIPのスタートからこれまで,自動車業界における会社を超えた協調体制の実現,官の動きによるエンジン開発費用の確保,大学の研究室同士の連携,SIPプログラム委員のチームワークという4つの奇跡が重なってきたことを紹介した。

 

杉山PDは,日本の自動車業界における協調体制実現の背景としてヨーロッパの動向に触れ,「自動車会社が個別にハイブリット技術を開発していた頃,ヨーロッパではメーカー同士が協力しヨーロッパ全体でディーゼルエンジンのブームを作り上げていた。個々の会社がいくら頑張っても一丸となった海外勢にはかなわないという強い問題意識を,この時に会社を超えて共有できたのが変化の大きな要因だった。」と述べた。
企画セッションの「産産学学連携の永続活動に向けた新たな仕組み構築」と題した講演の中では,自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)とSIPの今後の展望が語られた。AICEは,設立5年目となる2019年を新ステージとし,賛助会員や賛助会員ではないサプライヤーにも門戸を広げて全ての研究成果にアクセスできるようにしていく。また,SIP終了後の体制を持続的に維持する枠組みとなる「学の連合体」として,産業技術総合研究所による「内燃機関産学官連携コンソーシアム」の設立が発表された。
研究成果の発表では,4チームの研究責任者が概要を説明し,若手研究者によるフラッシュプレゼンテーション,研究メンバーによる研究の詳しい説明が行われ,最後にプログラム委員からコメントが寄せられた。当日のプログラムは以下の通り。

【開会挨拶】

  • 黒田 亮 氏(内閣府 大臣官房審議官)
  • 杉山 雅則 氏(SIP「革新的燃焼技術」プログラムディレクター,トヨタ自動車)

【講演】

  • 「乗用車用ディーゼルエンジンにおける高度燃焼制御」 ディーゼル燃焼チーム研究責任者 石山 拓二 氏(京都大学大学院)
  • 「革新的燃焼技術を具現化するモデリングと制御」 制御チーム研究責任者 金子 成彦 氏(東京大学大学院)

【企画セッション:SIP革新的燃焼技術を将来へ繋ぐ】

  1. 「SIPで私たちはどう変わったか?~ラボの変化から産学の変化を見透す~」 三原 雄司 氏(東京都市大学)
  2. 「世界最先端3Dエンジン燃焼シミュレーションコード「HINOCA(火神)」を活用した研究・開発」
    草鹿 仁 氏(早稲田大学理工学術院),店橋 護 氏(東京工業大学工学院),高林 徹 氏(AICE/本田技術研究所)
  3. 「産産学学連携の永続活動に向けた新たな仕組み構築」
    木村 修二 氏(AICE/日産自動車),西尾 匡弘 氏(産業技術総合研究所),石山 拓二 氏(京都大学大学院)

【講演】

  • 「排気エネルギーの有効利用と機械摩擦損失の低減に関する研究開発」 損失低減チーム研究責任者 大聖 泰弘 氏(早稲田大学 研究院)
  • 「高効率ガソリンエンジンのためのスーパーリーンバーン研究開発」 ガソリン燃焼チーム研究責任者 飯田 訓正 氏(慶應義塾大学大学院)  (’17 7/12)

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