国土交通省は,2020年より全世界的に実施される船舶燃料油中の硫黄分濃度に係る規制(SOx規制)の強化に対応するため,国内石油元売各社が規制適合燃料油として供給を想定している低硫黄(LS)C重油や,現在販売されている高硫黄(HS)C重油などのサンプルの提供を受け,混合安定性試験を実施した。
混合安定性試験は,2019年3月に国土交通省,資源エネルギー庁,日本内航海運組合総連合会,石油元売事業者の連携事業として,日本海事検定協会が実施した。燃料油のサンプルは,出光興産,コスモ石油,JXTGエネルギー,昭和シェル石油,富士石油が提供した。すべてのサンプルについて単体での安定性を確認した上で,規制開始時の補給を想定したHSC:LSC=2:8と,他社間のLSC重油同士の混合を想定したLSC:LSC=5:5のすべての組み合わせでASTMのスポットテストを行った。その結果,単体安定性,混合安定性試験のいずれも,安定性は確保できていることを確認した。
また2019年6月27日から1週間,実船の燃料を規制適合油へ切替えて運航するトライアル事業の第一弾を実施した。トライアルでは,燃料配給船(バンカー船)及び同船から規制適合油の補油を受けた4隻の内航船(499~749Gtの鋼材運搬船・セメント運搬船)が,通常と同様,事前のタンククリーニングは行わず,少量のHSC重油が残るタンク内に規制適合油を注ぎ足す形で補油して外洋・瀬戸内海を含む航路で運航を行った。その結果,改造を行うことなく,規制適合油への円滑な切替,正常な運航が可能であることが確認された。(’19 7/10)