出光興産は,2024年2月9日(金)に東京都内及びZoomによるオンラインのハイブリッド方式で「2023年度切削・熱処理研究会」を開催,327名が参加した。
冒頭,同社潤滑油二部次長の半田 豊和 氏は,「切削研究会は1975年から,熱処理研究会は1976年からそれぞれお客様の切削・熱処理の最新情報の提供,双方向の意見交換の場として開催しています。
世界的にSDGsの達成,脱炭素社会の実現が求められており,製造業を含む産業界でも益々重要性が高まっています。新型コロナウイルスの猛威の収束に伴い,中国経済の停滞はあるものの,自動車,航空機などの輸送機器,半導体産業を始めモノづくり産業は活気を取り戻したと思います。この様な背景の中,生産と環境を配慮する事が重要になってきています。
出光興産では,2030年ビジョン『責任ある変革者』,2050年ビジョン『変革をカタチに』に向け,化石燃料を中心に燃料を安定的に供給する責任を果たしながら多様で地球環境にやさしい低炭素エネルギー,省エネ・循環ソリューションの社会実装に取り組んでいます。潤滑油についてもお客様のカーボンニュートラルに貢献するためのご提案,新規潤滑油の開発を含めた技術確立を強く推進しています」と開催の挨拶を述べた。
午前中には切削2件の講演があり,阿曽 孝洋 氏(タンガロイ)は「難削材加工用高能率工具と活用方法」と題し,軽量,高強度,高耐熱性といった今後も使用拡大が予想される難削材を高能率加工するための最新の切削工具と採用されている技術,最大限に活用する手法を紹介した。小矢 俊亮 氏(出光興産)は「環境対応水溶性切削油アルファクールNVシリーズの実用性能と海外の油剤開発」,環境対応水溶性切削油による使用量削減や更油期間の延長など開発コンセプトや使用実例と共に海外での油剤開発事例についても触れた。
午後からは熱処理3件の講演が行われた。杉本 剛 氏(旭川工業高等専門学校)は,「CASE時代で進む自動車とものづくりの進化」と題し,130余年の自動車の変化で熱処理がどのように変化してきたかを,ものづくりの流れの観点で見た昨今のDX・GXが言われる中,今後の変化を検討した。武本 慎一 氏(DOWAサーモテック)は,「カーボンニュートラルに向けた熱処理屋の取り組み」,日々の生産活動の中で多くのエネルギーを消費しCO₂を直接排出している需要者側の立場に立ち熱処理メーカーが直面している現状の課題や解決への取り組み事例を紹介した。杉浦 崇仁 氏(出光興産)は,「カーボンニュートラル実現に向けた冷却剤の取組み」,適切な冷却剤を選定することによるCO₂排出量削減や油剤使用量低減等の冷却剤に関する取り組みを紹介した。(’24 2/21)