2023年12月20日

九州大学,水素利用触媒プロセスを用いた革新的な硫黄化合物合成法について発表

アーステック

九州大学大学院理学研究院の徳永 信 教授,山本 英治 助教,理学府修士課程2年髙城 悠太 氏,福岡工業大学工学部の蒲池 高志 教授,DICの松枝 宏尚 氏らの研究グループは,コバルト酸化物を触媒として用いることで,アルケン,単体硫黄,水素と,シンプルで安価な原料からジアルキルポリスルファン類を効率的に合成することに成功した。

ジアルキルポリスルファン類は,二つ以上の硫黄原子が連結した化合物。切削加工において装置の摩耗を防止する目的で使用される潤滑油の極圧添加剤として広く利用されており,工作機械による金属加工などで年間数万トンの需要がある。現在,この化合物はアルケン,単体硫黄に加え,還元剤として硫化水素を原料とする触媒的合成法で製造されているが,硫化水素は極めて高い毒性をもつため,入手経路が限られる上,高い管理コストが必要となるなどの問題があった。

同研究では,無溶媒条件において,コバルト酸化物触媒存在下,単体硫黄,水素加圧下(3–5MPa)でジイソブテン(DIB)と作用させることにより,対応するジアルキルポリスルファン類を高収率で得ることに成功した。また,反応後,生成物と触媒は容易に分離回収可能で,回収生成物は,現行法の製品とほぼ同等の性能を示し,回収触媒は何度も再利用することができる。

これにより,従来の工業的製造法において還元剤として利用されてきた硫化水素に代わって,毒性が無く,安価な水素ガスを活用し,効率的にジアルキルポリスルファン類の合成が可能であることが示された。今回開発した手法では原子効率の高い反応剤である単体硫黄と水素ガスを組み合わせた珍しい反応系で,今後,様々な有機硫黄化合物の効率的合成の開発が期待される。同研究はアメリカ化学会の国際学術誌「ACS Catalysis」の電子版(投稿原稿)に2023年10月19日(現地時間)に掲載された。(’23 12/20)

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