ニーナスジャパンは2018年6月19日(火),スウェーデン大使館(東京都港区)において「第2回NYNAS絶縁油・ELI(ELectrical Industry)トレンズセミナー」を開催し,関係者60人以上が参加した。
NYNASは,スウェーデンに本社を持つナフテン系国際スペシャリティオイルメーカー。変圧器メーカーに供給する電気絶縁油,タイヤメーカー・ゴムメーカーに供給するゴム加工油や伸展油,金属加工油やグリースの原料油,接着剤や靱性のあるプラスチック等の化学製品製造用のオイルなどを扱う。2014年に日本に参入し,現在,日本でのビジネス拡大を目指す。
同セミナーは2015年より開催,2016年のLUBトレンズ,2017年のRUBBERトレンズに続いて4回目の開催となる。今回は2015年に開催した絶縁油の2回目として,絶縁油・ELIの産業を取り巻く環境や,絶縁油の技術・規格動向について紹介した。
スウェーデン大使館商務部参事官のセシリア・レイラム 氏はオープニングの挨拶で,「今年は日本とスウェーデンとの外交樹立150周年を迎えますが,これを機に両国の企業がさらに関係や連携を深めていけるような年にしていきたい」と述べ,両国のビジネス関係が円滑に推進されるように大使館としても協力していく考えを示した。
ニーナスジャパンのゼネラルマネージャー・佐野 茂 氏(写真)は「日本における絶縁油の動向」をテーマに講演。「今後の日本の方向性はグローバル・ハーモニゼーションがキーワードになる」と強調した。絶縁油市場はグローバルで130万t,国内6万tの市場規模と言われ,そのうちグローバルでは同社が約25%のシェアを持つ。規格の違いもあり,国内ではパラフィン系絶縁油が50%を占めるが,海外ではナフテン系が主流で70%を占める。経済産業省は日本のガラパゴス化を避ける目的からも,国際規格が存在する場合,国内規格もそれに準ずる方向で推進する考えだという。仮にJISが改定されれば,国内市場のパラフィン系とナフテン系潤滑油の市場構成比が逆転していく可能性が大きいと予想した。
NYNASリージョナルディレクターのフィリップ・オーディベール 氏は,同社のビジネス概要を説明。同社が世界31ヵ国で活動し,「ドイツとスウェーデンの2ヵ所に製油所を持ち,変圧器用絶縁油など特殊オイル分野が強みである」とその特徴を説明した。
同社ゼネラルマネージャーのレオン・リー 氏は「アジアにおける絶縁油産業の動向」について講演。変圧器市場のトレンドについて触れ,「石炭などの化石燃料が減少する一方で,再生エネルギーである太陽光・風力発電が増加している」と,従来の発電方法が変わりつつあるとの認識を示した。電力消費に関しては,「新興国を中心に長く成長が続く」とし,変圧器市場も同様に成長を続けると予想した。
同社シニアテクニカルアドバイザーのブルース・パーラワンプール 氏は「IEC / CIGRE活動とIEC60296更新」をテーマに講演し,IECには219の技術委員会や1,453の作業部会があり,20,000人の専門家によって1,634のプロジェクトが推進されていることなどの活動を紹介した。
また,特別講演として,ユカインダストリーズ開発部主任の佐藤学氏が「過酸化物による絶縁油特性の不安定化」について講演。佐藤氏は,過酸化物が絶縁油に及ぼす影響について,(1)一般的特性(2)化学的安定性(3)硫化腐食の分析結果を紹介した。
ニーナスジャパンの佐野 氏は今回のセミナーについて「多くの方々に関心を持っていただき,当社への強い期待を感じました。このようなセミナーの開催を継続しながら,お客様にご満足いただけるように活動していきたいと思います」と抱負を語った。(’18 8/8)