2026年3月18日

「オール・エレクトリック・ソサエティ」を支える産業用コネクティビティの革新―ハーティング・プレスツアー2026に見る,デジタル化・電化・自動化の未来―

1945年の創業以来,ハーティングは世界の産業用接続技術をリードしてきた。2026年2月23日(月),同社の本拠地ドイツ・エスペルカンプにて開催されたプレスツアーでは,各国から集まったジャーナリストに対し,目前に迫ったハノーバーメッセ2026のプレビューと,同社が描く中長期的なイノベーション戦略を公開した。

現在,ハーティングは世界42の販売会社,14の生産拠点,7つの研究開発サイトを擁し約6,100名の従業員が活動するグローバル企業へと成長している。2024/25年度の売上高は11億ユーロに達し,厳しい市場環境の中でも再び成長軌道へと戻っている。今回のツアーでは,同社が掲げる「オール・エレクトリック・ソサエティ(全電化社会)」の実現に向けた,電化(Electrification),デジタル化(Digitalization),自動化(Automation)の3つの柱が紹介された。

1.グローバル市場の動向:米州とインドが牽引する成長エンジン

ハーティングのビジネスは,地域ごとに異なるダイナミズムを見せている。シニアバイスプレジデントのノルベルト・ゲンメケ 氏らによれば,ドイツ市場は依然として重要だが現在は変化の時期にあり,一方で米国とアジア(特にインド)が力強い成長となっている。

米国での事業開始から40年を迎え,現在はダラスの米州本部に加え,メキシコ工場やブラジル拠点での投資を強化している。特にブラジルはハノーバーメッセ2026のパートナー国でもあり,持続可能な技術において世界第3位の市場規模を誇る重要な戦略拠点となっている。

インド市場では鉄道,機械,データセンターといったあらゆる分野で2桁成長を記録しており,現在のイノベーションのスピードと規模は,かつての中国市場を彷彿とさせるベンチマークとなっている。

これらの地域では,従来2〜3年を要していた製品開発が,現在では1年未満,場合によっては10ヵ月という驚異的なスピードで進められ,地政学的な競争にも対応している。

ノルベルト・ゲンメケ氏プレゼンテーションの風景-ハーティング・プレスツアー2026
写真1 ノルベルト・ゲンメケ氏プレゼンテーションの風景

2.ハノーバーメッセ2026の見どころ

2026年のハノーバーメッセにおいて,同社は「Discover future-proof connectivity(未来に耐えうる接続性の発見)」をモットーに,主に4つのエリアで革新的なソリューションを提示する。

(1)エネルギー・インフラ(Energy Infrastructure)

現在のエネルギー転換における最大のボトルネックは,発電そのものよりも「送配電網(グリッド)」の老朽化と容量不足にある。不安定な再生可能エネルギーを安定させるためのエネルギー貯蔵システム(ESS)や,グリーン水素を用いた発電ユニット(HPU2)向けの接続ソリューションを展示する。

(2)産業オートメーション(Industry Automation)

キャビネット内からフィールド機器(IP67環境)に至るまで,電力とデータの伝送を支える広範なポートフォリオを披露する。特に,センサーレベルまで直接IP通信を拡張する技術が中心となる。

(3)ロボティクスと製造ライン(Robotics and Production)

単一のロボットアームだけでなく,AGV(自動搬送車)やドローン,さらには最新のヒューマノイドロボットを含めた生産ライン全体のオートメーションを展示する。ここでは,位置ずれを許容するブラインドメイティング(自動嵌合)技術などが紹介される。

(4)デジタルツールとサービス(Digital Tools)

物理的な製品に加え,数百万通りの組み合わせから最適なコネクタを選定できるコンフィギュレータや,機械読み取り可能な「デジタル製品パスポート(DPP)」といったデジタルエコシステムが提供される。

3.ハーティング製品の核心的特徴とイノベーション

(1)高効率・大電流対応:Han S 450

エネルギー貯蔵システム(ESS)向けに開発されたフラグシップ製品「Han S 450」は,最大450A(特定条件下で500A)の電流に対応し,2,000Wの電力を供給する。

(2)安全性と利便性

360度回転可能な設計により,限られたスペースでのバッテリーモジュールの交換を容易にする。また,指の接触を防ぐ保護機能や,誤操作を防ぐ2段階のロック機構を備えている。

(3)接続性のミッシングリンクを埋める:Han 4B

長年,ハーティングの小型サイズの矩形Hanコネクタは3Aサイズと標準的な6Bサイズの間で選択肢が限られていたが,新たに「Han 4B」を世界初公開した。これにより,さらに高密度で省スペースな設計が可能となり,顧客の細かなニーズに応える。

(4)産業用イーサネットの新標準:SPE(シングル・ペア・イーサネット)

従来のイーサネット伝送技術に代わる革新的技術として,SPEが強力に推進されている。

特徴:SPE用コネクタT1 Industrialは,従来のインターフェースに比べ,PCB(基板)上のスペースを大幅に削減できる。1対のツイストペア線で通信と電力供給(PoDL)を行うため,ケーブルコストを低減しつつ,振動に強い堅牢な接続を実現する。

活用例:1970年代の旧式設備(ブラウンフィールド)にSPEを導入してデジタル化を後付けする「レトロフィット」により,効率的なデータ収集と運用が可能になる事例も紹介された。

(5)ロボティクス向けコネクタ:ICC 20

ロボットのドレスパック(配線束)向けに開発された「ICC 20」は,円形コネクタでありながら高度なモジュール性を備えている。電力,信号,データを一つのインターフェースに集約でき,ロボットハンドの交換などを容易にする。

商品説明の風景-ハーティング・プレスツアー2026
写真2 商品説明の風景

4.データセンター向け超小型給電コネクタ

爆発的に増加するデータセンター需要に対し,米国の標準サイズから70%の小型化を実現した電力供給ユニットが開発された。軽量化によって設置全体の重量をトン単位で削減できるだけでなく,接触抵抗を最小化した独自の「削り出しコンタクト」により,熱損失を抑えて冷却コストを大幅に削減できるメリットがある。

5.未来の産業を形作る役割

ハーティングのプレスツアーでは,コネクティビティがもはや単なる「部品」ではなく,社会全体の効率性と持続可能性を左右する「戦略的インフラ」である。

「データと電力は,現代のシステムの不可欠な生命線である」と,同社上級副社長のノルベルト・ゲンメケ 氏は述べている。デジタル化が進むほど,物理的な接続部の信頼性がシステム全体のアップタイムを決定づけることになる。ハーティングは,基板レベルから過酷なフィールド環境に至るまで,一貫した高品質な製品を提供することで,2026年以降の「オール・エレクトリック・ソサエティ」を支え続けると説明した。(’26 3/18)

プレスツアー参加者-ハーティング・プレスツアー2026
写真3 プレスツアー参加者

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