オートケミカル工業会(理事長:渕田 昌嗣 氏(武蔵ホルト 取締役社長))は2022年5月19日(木),2022年通常総会をホテルグランドヒル市ヶ谷(東京都新宿区)にて開催した。また,同所「芙蓉の間」において三浦 和也 氏(イード 社長室長,「レスポンス」編集人)を講師に迎え,「EV化で加速する自動車の新しい価値 ~ソニーがEVで狙うもうひとつの市場~」と題された講演会を開催した。
同氏は,「世界はカーボンニュートラル(CN)の流れが大きくなっているが,日本は,欧州ほどは対応していないのが現状。しかも,個々の製品のCO₂削減ではなくLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の考え方をベースにしている。日本の製品はやがて輸出できなくなるかもしれない。ただ,日本の強みは現地生産のビジネスモデルに早期に着手した点が挙げられ,エレクトロニクス技術で優位に立ってきた歴史がある。今や世界ではEV(Electric Vehicle:電気自動車)の販売台数はHV(Hybrid Vehicle:ハイブリッド自動車)を超え,日本でも年間2万台の販売台数を数える。自動車の大きな動きは,その産業だけでなく関連する産業も大きな流れが来ることが多い。100年前,デトロイトでは自動車と不動産の大きな流れが同時発生した。今回はそれらにエネルギーが加わった3業界が大きく変化する可能性がある。自動車そのものは,“所有から利用へ”となるのではないか。EVにおいてはサブスクリプションやリース販売が主流になり,2030年の予測では1.8億人がカーシェアを,0.8億人がレンタカーを利用するとの見通しもある」と世界の自動車産業の状況を概観した。
すでに異業種の参入も始まっている自動車産業でソニーはどうしていくのか,三浦 氏は以下のように語った。
「ソニーは“クリエイティブ・エンタテインメント・カンパニー”で,テクノロジーとコンテンツを垂直融合させた感動を伝える力を軸にしていく。同社は音楽や映画などコンテンツビジネスに34年前から関わり,経営危機の際にもそれらを手放すことはなかった。家電のソニーではなく,コンテンツ,エンタメのソニーであり,それは他社が持っていない強みとなっている。今後,自動運転技術が進むことで,自動車は移動手段であると同時に“もう一つの部屋・空間,こもる場所”へとなる。“SONY-CAR”はこもる場所にコンテンツを提供する“イマーシブカー”をめざしている。これは,音楽,ゲーム,エンタメなど多数のコンテンツを有するソニーだからこそ実現できる」。
すでに「VISION」としてクーペタイプのS 01,SUVタイプのS 02の試作車両が公開されたソニーのEV。同氏はS 03としてミニバンタイプを登場させるのではと予測している。今後の動向にも注目したい。(’22 6/15)