トライボコーティング技術研究会(会長:大森 整 氏,理化学研究所)は,2022年2月25日(金)に理化学研究所 和光研究所 鈴木梅太郎ホール(埼玉県和光市)で,第24回シンポジウム「トライボコーティングの現状と将来―摩擦界面の解析と固体潤滑,DLCコーティングの最前線,薄膜研磨・デバイス開発―」を開催,第14回岩木トライボコーティングネットワークアワード(岩木賞)の贈呈式と受賞者による記念講演を,ビデオ会議システムを利用したオンラインとのハイブリッドで行った。
岩木賞は,表面改質,トライボコーティング分野で多大な業績をあげられた故 岩木 正哉 博士の偉業をたたえ,当該技術分野およびその関連分野において日々努力・研鑽する個人,法人,団体の業績を表彰するもの。第14回岩木賞を受賞したのは以下の3件で,賞状,盾が授与された。
- 岩木賞優秀賞
「摩擦界面in situ観察―AEセンシング研究によるトライボロジー現象の可視化・診断の基盤構築」…長谷 亜蘭 氏(埼玉工業大学)
その場観察とAEセンシングを活用し,トライボロジー現象の可視化・診断に関する研究を産学連携で推進し,トライボロジー現象が関わる様々な問題解決へのアプローチを行い,今後のIoT化やスマート化の加速や日用品,食品,医療など新規分野への応用や展開が期待される。 - 岩木賞特別賞
「宇宙探査における次世代型サンプルリターン用固体被膜潤滑剤の開発」…川邑 正広 氏(川邑研究所),松本 康司 氏(宇宙航空研究開発機構)
小惑星の次世代型サンプルリターン機構の駆動部でコンタミネーション下での潤滑要件に耐えるPTFE系被膜の改質剤としてPIP(ポリイミドパウダー)の添加による固体被膜潤滑剤の開発に成功したことが評価された。 - 岩木賞事業賞
「金属箔(長尺フープ状)研磨技術の開発」…赤羽 優子 氏(ティ・ディ・シー)
金属箔の鏡面加工の技術開発を積み重ね,ナノレベルの表面粗さを連続的に実現する独自の専用装置を開発,長尺フープ状の金属箔の超鏡面加工及び量産化に取り組みユーザーニーズに応えられるレベルに到達したことなどが評価された。
当日は岩木賞受賞者による記念講演3件のほか,川本 秀士 氏(ナノコート・ティーエス)が「水素含有率の異なるDLCコーティング被膜の非鉄金属に対する耐凝着性の評価」,吉田 健太郎 氏(神奈川県立産業技術総合研究所)が「潤滑状態や潤滑剤の化学構造によって異なるDLCコーティング膜の摩擦特性」,福田 憲二郎 氏(理化学研究所)が「超薄型有機電子素子を利用した集積化デバイスの実現とウェアラブルエレクトロニクス応用」と題し会員企業による3件の講演などが行われた。(’22 3/23)