独・ランクセスは2019年4月22日(月),都内で2018年度の業績に関する記者説明会を開催した。辻 英男 社長は「経済的な逆風にも関わらず,2018年度通期連結売上高(グローバル)は71億9,700万ユーロに達した。アランセオ社の株式売却,ケムチュラ社およびソルベイ社の買収など特殊化学品に明確に焦点を合わせた経営計画により利益率,安定性,競争力が向上し成果となって表れた」と事業の見直しと合併によるシナジー効果を強調した。
2018年度業績(グローバル)は,連結売上高71億9,700万ユーロ(前年比10.2%増/日本円:約9,360億円(1ユーロ130円で換算)),EBITDA(利払い・税引き前・減価償却前利益)10億1,600万ユーロ(同9.8%増/同:約1,350億円/特別項目を除く),純利益4億3,100万ユーロ(同395.4%増/同約560億円/同)と好業績を達成した。純利益の大幅増はアランセオ社の株式を全保有の50%を売却したことが大きな要因となっているが,特定の産業に偏らない事業展開の再構築を図った結果,自動車/タイヤ,化学品,農業,建設・電気&電子の各事業部門の売上高がそれぞれ全体の10~30%となり,バランスの取れた事業展開化が進んだことも一因といえる。
日本においても好業績を維持し,売上高は約3億1,000万ユーロ(同:約400億円)を達成。辻 社長は「アランセオの現地法人がない日本では同社の売り上げも算入されるため自動車分野の売り上げが多数を占めるが,全体の50%には満たず,ほぼすべての部門で売り上げを順調に伸ばした」と述べた。
事業別(グローバル)では,アドバンスト中間体部門は,売上高22億700万ユーロ(前年比11.7%増),EBITDA3億5,900万ユーロ(同7.2%増/特別項目を除く)で,厳しい農業市場にありながら堅調に推移した。スペシャリティアディティブス部門は,売上高19億8,000万ユーロ(同22.9%増),EBITDA3億4,300万ユーロ(同28.5%増/同)と,買収した事業の統合が成果を上げ高い伸びを見せた。パフォーマンスケミカルズ部門は,売上高13億4,900万ユーロ(同6.3%減),EBITDA1億8,700万ユーロ(同25.8%減)で,皮革および顔料事業の落ち込みをカバーできない結果となった。エンジニアリングマテリアルズ部門は,売上高15億7,600万ユーロ(同15.4%増),EBITDA2億6,700万ユーロ(同21.9%増)となり,軽量化デザイン向けプラスチック事業とウレタン事業の好調さが数字に表れた。
2018年度には成長プロジェクトへの投資として,レバークーゼンとクレフェルド拠点における中間体の製造能力拡大,レバークーゼン拠点でのマクロレックス染料とイオン交換樹脂の製造能力拡大など1億5,000万ユーロ(日本円:約200億円)を投資したが,2019年度以降,成長市場であるアジア亜太平洋地域への注力を強め,2023年までに最大2億5,000万ユーロ(同:約325億円)の投資でアジア地域の事業強化を図るという。また,日本においては「成長市場である電気自動車などのニューモビリティ向け軽量化ソリューションの提供」「持続可能な都市の発展を支える高品質な建築材料分野への注力」「耐火性・安全性を高める難燃剤への注力」「持続可能な発展を推進する事業活動及び社会的責任への取り組み」「デジタル化による業務効率化と顧客サービスの充実化」を柱として活動をしていくことも併せて発表された。(’19 5/8)